第19回(2022年) 入賞者

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ねじめ正一氏選評
 ポエム大賞 吉田茉央さん「累卵」は、自分にくっついてる言葉はすべて言葉にして、一気呵成に全部吐き出していく、言葉の強さがある。無機質な孤独感、退廃感が詩全体に流れていて、読む人を立ち止まらせずにどんどん引っ張り込んでいく。(・・・偽りでない乳房などを撮影して)(胃に溜まる気配がない)(とんとん拍子で腐敗して)言葉がどんどんはみ出して挑戦的になってくる。
 富山銀行賞 森琴音さんの「風といっしょ」は、猫じゃらしと鳥の羽がくっついて、風にゆらゆら遊んでいる。風は本来見えないものなのに、風の姿も見えてきて、この三つが一緒になり無邪気な気分を生む。
 小学生最優秀賞 窪田彩人さん「ぼくの弟はじまんの弟」は、読んでいてもどこに着地するのか分からなくて、ハラハラドキドキしていたが、こちらの心配をよそに、着地すべきところにちゃんと着地させている。弟への嫉妬感情も見え隠れして嬉しくなった。
 中学生最優秀賞 内山芽泉さんの「七夕」は、先生の動きを見つめる視線が、正確で丁寧である。先生に会ったことのない私も会ったことのあるような親しみを覚えた。コロナ禍にこの先生に出会えて本当によかったと思った。
 高校生最優秀賞 恵森愛さんの「夜のつめたさ」は、(夜を)(夜と)(夜へ)と助詞を変えながら、一つの世界を見つけ出そうと夜を歩き回っている。歩き回る浮遊感が作者が掴み取ろうとするリアル感と繋がっていて、嘘っぽくなくて良かった。
ポエム大賞・北日本新聞社賞
累卵

星槎国際高等学校1年 吉田 茉央(よしだ まお)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
偽りの名前 偽りの年齢 偽りの言葉
それらをプロフィールに打ち込んで
唯一偽りではない乳房などを撮影して
一言〈幸せでした〉と書いて
気持ちばかりのハートを添えて
飛行機のボタンを全世界に飛ばしたら
私の裸体に文字が群がってきた
教科書でしか見たことのない国の人が
私を褒めてくれた

胃に留まる気配がない
〈かわいいね〉〈すきだよ〉を食べる
サイズの合わない靴を履き 重い腰を上げ
玄関の扉のすりガラス越しに朝日を浴びた
いってきますを言わなくなったのは
いってらっしゃいと返されなくなったのは
いつからだろう?

もはや身体の一部と化してしまった
リュックサックをおろす
ねえ、と声がして リビングに行くと
珍しくエプロンを着たお母さんがいて
手には私のスマホが握りしめられてた
私は今すぐにこの世界を初期化したかった

涙の結晶が 澱んだ河に浮かぶ
それは一向に溶け切らず
それを誰もすくおうとせず
そのうち結晶は形を失った

沈みかけの夕日が意図せず私を蝕んでいく
太陽には常に居場所があって
世界から必要とされていて
科学的な命日まで持つ幸せもの

あるとき クラスメイトが
「未来の自分が想像できない」と言った
操り人形みたいに
周りと一緒に頷く私は嘘をついてた
午前一時に机の灯りを消すと
瞼の奥深くから浮かび上がってくる
とっくに賞味期限が切れた殻に閉じこもり
とんとん拍子で腐敗して
「ごめんなさい」も言わずに捨てられる
これ以上割りようがない ひとつだけの卵

きれいなものも
きたないものも
どうあがいたって 私の目には見えてしまう
だって
所詮ここはノンフィクション
富山銀行賞
風といっしょ

高岡市立高陵小学校4年 森 琴音(もり ことね)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
猫じゃらしが風と遊んでる
風をおんぶして遊んでる
ゆらゆらと遊んでる
うれしそうに遊んでる
くっついて遊んでる
子どもも大人もいっしょに遊んでる

あっ、鳥の羽がとんできた
猫じゃらしにくっついた
ずっとくっついて
はなれないでゆらゆらと遊んでる
さんにんで遊んでる

鳥の羽がふわふわととんでいった
わたしは追いかけた
風といっしょに追いかけた
風といっしょにつかまえた
小学生の部・最優秀賞
ぼくの弟はじまんの弟

高岡市立高陵小学校4年 窪田 彩人(くぼた あやと)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 

ぼくの弟
じまんの弟
ぼくができない口笛がふけるし
たまごをわることだって上手にできる
ぼくがちょっとこわいおばあちゃんちのネコだって
こわがらずにだっこしている
弟はとってもかわいい
とってもとってもかわいがられる
だから弟は家族の人気者

ぼくの弟
あわてんぼうの弟
いつもシャツを前後ろ反対に着ている
夏休みの宿題もギリギリだったよ
ゲームばっかりしているし
お父さんに怒られたら、すぐにお母さんに
甘えて助けてもらっている
お母さんはぼくのことを世界で一番大好きって
言うけれど
弟のことも世界で一番だっていう

ぼくの方が、がんばっているのにな

弟とは、よくケンカをする
お母さんに怒られたら
お兄ちゃんがした!
弟がした!
悪いことをなすりつけあう
で、また怒られる

ぼくと弟は
起きてから寝るまでずっと一緒
テレビもゲームもごはんもおふろもサッカーも
二人一緒だとめっちゃもりあがる

こわい夢をみた
ガバッと起きた
となりで弟がスヤスヤ寝てた
そっとくっついたらこわくなくなったよ

ぼくの弟はじまんの弟
ぼくと一緒に遊ぶためにおりてきてくれたんだ
中学生の部・最優秀賞
七夕

岡崎市立竜海中学校3年 内山 芽泉(うちやま めい)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
七夕を笹竹担ぎ連れてくる
ここだけみるとかっこいい大人
けれど
子供みたいに
蜘蛛の巣ついてないかなと
気にする先生 くまの縫いぐるみのよう
大丈夫
頭にも服にもついていない
学校の裏山で竹切る先生が頭に浮かぶ
春の筍堀も面白かったな
短冊配る先生は
テストを配るのと重なって見える
ちょっとしたことで笑えるのは
きっと先生のおかげ
コロナ禍でも楽しむことを教えてくれる
くすっと笑えるのが友達と重なると倍増する
案外頭に浮かぶ映像は皆一緒なのかも
私たちより楽しんで見える先生
きっと どこかにファスナーがある
開けたら小さな子供が出てきそう
大人になっても
子供と一緒になって楽しめるって素敵
私もそうありたい
笑いが響く教室
この雰囲気が好き
廊下でも
五色の揺れる短冊
笑いながら話してる
高校生の部・最優秀賞
夜のつめたさ

富山県立高岡高等学校2年 恵森 愛(えもり あい)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
僕は夜を歩く
人っ子ひとり居ない夜を歩く
少し背伸びして綻ぶ心
押さえつけて ただただ歩く
スキップ 飴玉 くるり
朝は来ないまま 我儘なんだ
変わりない みえない でも
怖くなんかないから

僕は夜と歩く
遠くにぼんやり光る夜と歩く
どこかに生きる虫の音
味わって ただただ歩く
ゲート 蕾 さらり
足元は暗いから 亡骸なんだ
変わりない みえない でも
怖くなんかないから

僕は夜へ歩く
虚無な暗闇から逃げる夜へ歩く
すれ違って急ぐ景色
追いかけて ただただ歩く
スカート 耳鳴り ぐらり
声も聞こえないなら さよならなんだ
変わりない みえない でも
怖くなんかない
 怖くなんかない

僕は朝へ走る
眩く広がる朝へ走る
いつもは拒んだ優しい微笑み
帰りたくて ただただ走る
フライト 一番星 はらり
何も知らないかな 魚なんだ
変わりない みえない でも
わかる
  怖いよ
自販機も そよ風も 公園も
きっと誰もみえないふりをしていたんだ
夜のつめたさを
小学生の部・優秀賞
見つけたよ

奈良市立ならやま小学校2年 山本 直央(やまもと なお)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
おうちの中には「王」がいる
かばんの中には「かば」がいる
カーテンの中には「てん」がある
ぼうしの中には「うし」と「ぼう」がある
パンツの中には「パン」がある
かまくらの中には「まくら」がある
たからばこの中には「たから」がある
ホンモノかどうかは分からない
太ようの中には「たい」がいる
マルこげかもしれないけどね
おばあちゃんの中には「おばちゃん」がいる
さかなの中には「さか」がある
きのこの中には「木」がある
かみさまの中には「かみ」がある
こちょこちょの中には「ちょこ」がある
かんちょうの中には「かん」がある
みかんの中にも「かん」がある
ふみきりで鳴る音の中にはめっちゃある
かんの中には「か」がいる
かみんの中には「かみ」と「か」がいる

青森の中には「もり」がある
ふく井の中には「ふく」がある
と山の中には「山」がある

ことば見つけはおもしろい
おもしろいの中には「しろ」「いろ」「おもし」「おしろ」
「もし」「おいも」がある
うんちの中には「うん」がある
「うち」に「うん」がやってくる

おんぷ

奈良市立ならやま小学校2年 山本 愛奈(やまもと あんな)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
♪の音が出た出た きれいな音
ドレミの音 きれいだ きれいな音
大好きなきれいな音

でもわたしのパパ
音楽がなくても歌う おもしろいね
どこでうたったのか教えてあげる

さんぽのとちゅう
自てん車にのっているとき
車の中
おふろの中

わたしもうたうけど
パパの歌うせいで うるさい
どんどんおんぷがなくなっている
どうしよう 歌がなくなる

パパがへんな歌を言う
わたしもそれを言う

うぇんとこどっこい うんどう会
うぇんとこ どっこい 
うぇんとこ どっこい
うんどう会
ゆうしょう!
中学生の部・優秀賞
宙ぶらりん

高岡市立五位中学校3年 中保 諒哉(なかほ りょうや)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
宙ぶらりん
理想と現実のはざま
宙ぶらりんしている僕に
大人がくれるプレゼントは
劣等感とか現実味あるもんばっかで
開けた時から悶々とした夜が始まる
眠れない日の数だけ歪んでく
綺麗事を言うことすらできない
もう耐える力が絶えたみたいにイライラが
口走って無差別攻撃を始める
言葉の羅列が止められない爪痕を残したくて
次々に心を抉り返す
その分だけ自分にも跳ね返って歪みの
消費残量溜まってく
苦しめたくはないけど消費しないと
壊れる自分がいる 今日も口が先行して
思ってもないことを口に出す
やっぱりどうしても自分のことを
好きになれない 何とかしたい
そういう時は皮肉にも大人に頼る
大人にしがみついて宙ぶらりんにしか生きられない
落ちる 落ちない 高揚感
謎の高揚感あなたも楽しんでるね
みんな魅せられてるこの高揚感にいつまでも
だから大人も子供もリングの飾りみたいに
宙ぶらりん

朝の葛藤

神奈川県立相模原中等教育学校3年 渡邉 和子(わたなべ わこ)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
目覚ましの鋭く軽快な音
等間隔に脳に響いて
条件反射みたいに叩き止める

少しすると
砂がかかるように意識が遠のく
まどろみの中
誰かと踊った気がするけれど
目覚ましが再び私に現実を呼びかけ
ようやく意識が醒めてくる

布団を被ったまま
ちょっとずつ今日を思い出し
頭の中でシミュレーション

七時の電車には間にあいたいな。
コンビニでパンとお茶買って、
一時間目は小テスト?
電車の睡眠時間はあきらめよう。
ア、グループワークの課題やってない!
数学当てられそうな予感。
午後の体育は持久走?

…やだな、やだな。
何だか少し憂鬱気分。
今から大雨が降って学校休みになればいいのにな。
宝くじ買ったら隕石とか落ちてきてくれたりしない?
体温計で熱を計ったら四十度でしたとか、
不良達の喧嘩に巻きこまれたので公欠扱い
とかそういうのはないのかな。

あぁ、めんどくさい。

社会の皆は頑張ってるのに私ひとりだけうだうだしてて、
なんだか私ってとってもとってもだめなやつ。
いっそこのまま塵になれたらいいのにな。
でも、でもさ。
やらなきゃ人に迷惑かけちゃう仕事がたくさんあるし。
今日友達に本借りる約束してるし。
好きな先輩部活に来るし。
なんかおなかも空いてるし。
ちょっと頭は痛いけど、
ちょっと体は怠いけど、
今日も一日やってみようかな。

ほんの数分、
されど数分、
今日の始まり
朝の葛藤。
高校生の部・優秀賞
教示を

神戸市立須磨翔風高等学校1年 大田黒 夏妃(おおたぐろ なつき)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
六本の指を絡ませる
ああ これが恐怖か。
一本の脚を折り畳む
ああ これが焦燥か。
慰めは 結構。
痩せ細った劣等感で 十分。
地に足を 喉に息を
それで 続きは?
何も教えてくれないじゃないか。
異端はどちらだ。
どちらでもいい。
これが 普通か。
一体それはどういうものだ。
何も教えてくれやしないくせに。

はらはらとさいわいのひびがちりゆくいのち

神奈川県立湘南高等学校3年 小林 彩奈(こばやし あやな)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 

いま
ぼくが
うまれた
たったいま
ここにいます
まばゆいひかり
あびるぼくをみる
みんなはかぞくたち
いっしょにくさをふむ
えがおたちはおともだち
はじめてともだちをぶって
ぼくのてはまっかにそまって
せんせいもちちもははもないた
あのひはみんながしかってくれた
あのひしったのはぼうりょくのいみ
あのひけんかしたあのこはしんゆうに
なるはずだったのになれないきょうには
それからたくさんのかなしみがふりそそぐ
うつむいたそのさきにまつのはひとをころす
 ぼくのあたらしいぎむといきるためのいみ
  きのうまであのひとはぜんにんだったの
   かもしれないけどぼくのめのまえでは
    ただのてきのひとりにすぎないのだ
     ぼくはなにかをほしがっていない
       だのにあいつらはうばっていく
       あかちゃけたからだのきしみ
        たくさんのあいにみをなげ
         ほこりたかかったひびを
          ついおくするいとまは
           そうながくはないと
            しんじつづけたい
             ぼくのぜんぶを
              ついやしても
               まもるべき
                ひとたち
                 ちった
                  ぼく
                   は
小学生の部・佳作
かたまり

射水市立金山小学校5年 高橋 美土(たかはし みと)
やんだもーん
やれやれ
やったー
やけくそだー
やわやわ
やくそくなんかしなくても
やくわりをしましょう
やまのうえでみえをきらずに
やりたいようにやりましょう
やりばのないきもちも
やせがまんせずに
やみへほおむらないで
やまへむかってさけぶのです
やきばまでもっていかずに
やりきるのです
やまもひとも
やれやれとうけつけてくれるのです
やりきってください
やりきらずにしんじゃだめです
やらずにしぬとしねません
やっとうまれてこれたのです
やっとこのほしにこれたのです
やむにやまれぬじじょうをもってうまれました
やくわりとはあなたがあなたらしくいることです
やりきるのです
やりきってしぬのです
やえばをみせてわらってしぬのです
やりきらないとのりでまいてやりますから

りんご

高岡市立高陵小学校1年 加藤 咲(かとう さき)
りんごはあかくておおきいりんご
りんごはあまくてつるつるのりんご
ぼうもついてて おぼうしはっぱ
りんごはこどもたちにたべられた
おいしくてわらってしまったこどもたち
みんなもりんごをいっぱいたべた
りんごもたべてもらってうれしかった
だれもがいっぱいよろこんで
みんながりんごがおいしいことをひろめていって
りんごはまえよりよろこんだ
みんなもまえよりよろこんだ
よかったね
りんご

未来の自分へ

高岡市立高陵小学校5年 早川 真柚子(はやかわ まゆこ)
未来の私は、元気でしょうか。
未来の私は、ゆめをかなえて好きなことはできていますか。
私は、今、絵にかかわる仕事がしたいのでがんばっています。
でも、好きなことばかりではやっていけないのできらいなことも
ちゃんとしています。
今の私は、好きなことしかがんばらないせいかくです。
なおりましたか?

私は好きなアイドルがいます。そのメンバーの一人が大好きです。
その人はとってもおもしろい人で、ファンのためにがんばる人で好きになりました。でも、その人はもう少しで活動休止になります。
その人は最後に「自分は家族を笑わせるために勉強して、いい大学に入って、たくさんきらいなこともがんばって努力したんだ。」と言っていて今、好きなことをやっているのは過去にがんばったからなんだと、とっても心にささり、もっと好きになりました。

なので、私にはただ自分の好きなことをして、好きな人に恋をしてほしいです。でも、自分のゆめをあきらめてもいい、ただ未来の私に「幸せ
だな。」と一言、言ってもらいたいだけなのです。
過去の私には、わからないかもしれませんが、ずっと応えんしています。
 過去の自分より

雨がふれば

高岡市立高陵小学校5年 瀬戸 啓太(せと けいた)
雨がふれば、葉っぱがゆれる。
たくさんふれば、大きくゆれる。
ちょっぴりふれば、ちょっぴりゆれる。
ぽん。 ぽん。 ぽん。 ぽん。
ちょん。 ちょん。 ちょん。 ちょん。

雨がふれば、音が聞こえる。
たくさんふれば、大きく強く。
ちょっとふれば、小さく弱く。
ザー。 ザー。 ザー。 ザー。
とん。 とん。 とん。 とん。

雨がふれば、水がたまる。
たくさんふれば、たっぷりたまる。
ちょっとふれば、ちょっとたまる。
たぷん。 たぷん。 たぷん。 たぷん。
ぽちゃん。 ぽちゃん。 ぽちゃん。 ぽちゃん。

雨がふれば、水につつまれる。
たくさんふれば、世界つつまれる。
ちょっとふれば、少しつつまれる。
すっ。 すっ。 すっ。 すっ。
シュッ。 シュッ。 シュッ。 シュッ。

雨がふれば、波ができる。
たくさんふれば、大きくできる。
ちょっぴりふれば、小さくできる。
ばちゃっ。 ばちゃっ。 ばちゃっ。 ばちゃっ。
ぴちょん。 ぴちょん。 ぴちょん。 ぴちょん。

雨がふれば、リズムが作れる。
たくさんふれば、スピード早く。
ちょっぴりふれば、スピードおそく。
ザザザザザザザ。 ザザザザザザザ。
トッ。 トッ。 トッ。 トッ。

雨がふった後にじができる。
たくさんふってたら、こく強く。
ちょっとふってたら、うすくきれいに。

バケツ雨。じょばーん。っざばん。

富山大学教育学部附属小学校4年 奥 望帆子(おく みほこ)
じょばーん。っざばん、っばざん。
ざぼっ。ざぼっ。ざぼっ。
雨の音。いきなりのどしゃ降り。
雨ってこんな音だっけ?
ざぁざぁざぁざぁ。
絵本に書いてあった雨の音。
でも、この雨は「ざぁざぁ」とはちがう。
手が届きそうなくらいの真っ黒い雲。
雨つぶが一つぶ、一つぶ大きな涙のよう。
水たまりは、あふれかえって、ダムのよう。
こわい、いつまでこの雨が続くのだろう。
この雨の中だと、かさがこわれちゃう。
はやく、やんでほしい。お願い、お願い。
お母さんに電話してみて迎えに来てもらう?
じょばーん。っざばん、っばざん。
ざぼっ。ざぼっ。ざぼっ。
バケツの水が、ひっくりかえったような雨。
雨がいつやむのか、
だれか知っている人はいるの?
知っている人がいるなら、教えてほしい。
雨がやむ時間を教えてくれる人がいるなら、
こんなに心配しないのに。
はやく、やんでほしい。
下校の時間まで、お願い、
雨がやんでほしい。
中学生の部・佳作
教科書

高岡市立五位中学校1年 牧田 香朋(まきだ かほ)
四月から始まる 私の仕事
毎日 いくつもある口を 開いて とじる

口を開いて 持ち上げられて 
口をとじて ロッカーという どうくつに

ある日は
えんぴつで 口をこちょがしてくる
先生の目をぬすんで

そんな毎日を くり返し
下の口が よく開かれる そんな日が続く

三月に終わる 私の仕事
最後 一番下の口が 桜を食べて とじる

理想を求める羊

高岡市立五位中学校1年 八幡 明希(やはた あき)
たくさんの人が寝はじめるころ
だれかがねむれないと羊の数を数えた

その時彼の頭の中には
とても広い野原が広がっていた
その野原の中央にぽつんと木の柵がある
野原のはしから羊が一匹やってきた
羊が一匹と彼が言った瞬間
羊は軽々しく柵を飛び越えた
そのあとに少し重い足どりで
羊は野原のかなたへ姿を消した
時計の針が進むにつれ
数える声は弱くなる
ついに声が途絶えたとき
最後の羊が柵を越えた
うしろに並んでいる羊はもういない
そうして羊は歩き出した
少し悲しげな目をしながら
野原のかなたにある黒い世界
そこを目指して羊は行く
本当にそれが
正しいのかは分からないけれど

いきる

美馬市立江原中学校2年 坂本 梓(さかもと あずさ)
いじめはある
だから中学生は死にたがる
それでも命は尊いと
みんなが口にする
イライラの元はそこにもある
ちゃんと生きるために
ちゃんと死とも向き合う
そんな当たり前が
当たり前ではない

だから中学生は死にたがる
言葉は正しく
そうならば
いじめはない
暴行
脅迫
強盗傷害
器物損壊
迷惑条例違反
すべて犯罪
学校は犯罪をしても
いじめとして終わらせる場所なのか

だから中学生は死にたがる
学校では何でも許される
だから社会でも勘違いしてしまう
文句を言った者が勝つ
それは健康な社会なのか

だから中学生は死にたがる
遺憾です
それは残念だであって
ごめんなさいではない
言葉を正しく使いなさい
それなら大人も正しく使いなさい

だから中学生は死にたがる
絶望しても意味がない
それでも死にたい気持ちはわいてくる
それでも生きないとならない
希望はどこにあるのだろう
もう一度パンドラの箱を開けたらいいのか

だから中学生は死にたがる
生きているとは何なのか
ゆたかな人生とは何なのか
努力したら報われる
正直者は馬鹿をみる
どっちが正しいのだろうか

だから中学生は死にたがる
夢も希望もありません
だから自分でつくるだけ
死にたがりの中学生
生きるために
自分で希望を作ります

豆腐の子

フェリス女学院中学校3年 水谷 友理子(みずたに ゆりこ)
父が言う
「最近の子は豆腐メンタル」

「最近の子」のひとりである私は
自分の心のもろさを
指摘された気がして
ぐしゃりとへこむ

そんな身も蓋もないこと
はっきり言ってくれなくてもいいのに
誰だって傷つくことくらいあるのに

けれど
くずれやすい心を豆腐にたとえたのは
素敵だと思う
私は豆腐が好きだ

もしも私が絹豆腐なら
冷ややっこになりたい
つめたい醤油を頭から浴びたら
たぷたぷ揺れて遊びたい

愚直な私は
きっとおいしい冷ややっこになれる

もしも私が木綿豆腐なら
すき焼きの鍋に入れられたい
国産牛肉のとなりで
ぐつぐつ煮られてみたい

やわらかい私は
きっと卵とも仲良くなれる

卵生

神奈川県立相模原中等教育学校3年 安藤 優香(あんどう ゆうか)
何も、書けることがありません。
裸の自分を、さらけ出すことが怖いのです。

殻は、私を守ってくれます。
風評の、乾燥から守ってくれます。
天敵の、直接攻撃からも守ってくれます。
だから、殻を分厚く固くしてきました。

みんな、殻をやぶって書いています。
パリパリと、割れるのが手にとるようです。

プライドが、高いとよく言われます。
本当は、みんなみたいにのびのびしたいのです。
実は、自分に自信がないのです。
でも、今日は少しひびが入りました。

次はもっと、頑張ります。

読んでくれて、ありがとう。
高校生の部・佳作
ポエムと思考

広島県立福山誠之館高等学校1年 松下 杏美(まつした あみ)
ポエムを笑う人がいる。

楽しげに綴られた擬音を
恥ずかしいと言う。
きれいな言葉で飾られた思い出を
自分に酔っていると言う。
純粋な気持ちを持つ人に
脳内お花畑だと言う。

耳を塞ぎたい

ポエムは悪口として使われる。

自分の考えを書き込むだけで
お気持ち(笑)と馬鹿にされる。
痛いポエムなどと言われ
晒される。
ポエム、ポエマー等の言葉も
現代では侮辱の意味だ。

目を塞ぎたい。

ポエムは恥ずかしいと思い込んでいた。

小学生頃には既にそう思っていた。
周りの影響か
自身がそう考じたのか
さも当然のように
自然にそう思い込んでいた。

気づかぬ間に多数にのまれている
自分に怖気がする。

でも
縮こまっていては何もできないから
届く人にも届かなくなってしまうから
配慮を重ねても嫌われてしまうから
何をしても誰かに批判されてしまうから

それなら
自分の思いに従って生きていたい
好きを信じていたい
多数のための呼吸なら止めたい

このポエムを笑わない大人になりたい。

極楽での

国際基督教大学高等学校3年 豊田 隼人(とよた はやと)
「今日までどうやって、身を守ってきた」
この街の人々は
お前たちの犠牲だ
オプティミズムの後悔
磔になってからでは遅かった
ただ、お前たちは極楽に行ったという
わたしは、とうとう
そこに行く事ができた
いちど、ベンチに腰掛ける
お前たちに会える場所だ
無作法なことをしてはいけない
極楽は極楽らしく
綺麗な水と雲があればいいものを
雑居ビルと暗い路地で満たされている
その隙間から見える空は
澄んでいるというよりは虚しそうだ
人が歩いている
お前たちも歩いているかもしれない
いちど、死んでいるのに
生きているような歩き方が
このベンチからはよく見える
どうやら、極楽というのは
空に漂っているわけでも
地中にあるわけでも
宇宙空間を利用しているわけでもないらしい
あらゆる力が微妙に働いてできている そら
お前たちは、きっと
見つからないのかもしれない
極楽では、雑居ビルの上の方で
今度はお前たちが
磔にされているのかもしれない
それでも、わたしは
お前たちを追わなければならないから
極楽での、日々をまた生きていく

転寝と羽音

西宮市立西宮高等学校3年 青木 日向子(あおき ひなこ)
午後三時の転寝を
あなたは邪魔をする。
精一杯の羽ばたきを
私の耳元で響かせる。
いのちはたまに五月蝿いことを
あなたはまだ知らないでいる。
ああ、払い除けてしまいたいのだ!
(けれど私の息の音だってさわがしくて)
ああ、それが上手くできないのだ!
午後三時の転寝は
あなたの涙の味を吸う。
飛べなくなったその羽は
透明色に変わっていく
いのちはたまに優しいことを
私ははやく知るべきです。

散歩

神奈川県立湘南高等学校2年 泉 まいこ(いずみ まいこ)
ある日散歩に行きました
そこで親子を見ました
たくさんの家を見ました
空があることを知りました
この狭い世界すら
広いことを知りました
世界はいっぱいの笑顔で溢れています。

まあ明日には忘れます
まあ今夜には忘れます
まあ家に着けば忘れます
考えすぎだ
などと言いますが、よく分からないものです
私の頭は考えること以外できないので
世界はいっぱいの笑顔で溢れています。

この世界に創られた人は
誰一人として同じではないって
そう思います
みんな違ってみんないいってやつです
でもだから
誰も珍しくないんです
正直に言うと、たぶん
そういうことを知らずに生きていく人の方が
多いような気がします
でもそれは
大事な大事なかくしごとで
大きな大きな秘密のような気がします
世界はいっぱいの笑顔で溢れています。

君と空の間にあるもの

鹿児島第一高等学校2年 中村 亮輔(なかむら りょうすけ)
ふとした拍子に 空を見上げた
いつも下ばかり見て歩いていたせいか
こんなに青い空間を見たのは
いつぶりだろうか
どこまでも青い空 時折見える雲も
何かしら 大きな水溜まりに落ちた
一滴の牛乳のようだ
ただ ただ 空は高くて 
雲も薄くて 細長い

ふとした拍子に 君を見上げた
いつも側にいるのに
横に並んで歩いているからだろうか
こんなに近くで君を見たのは
いつぶりだか
どこまでも澄んだ瞳 
時折見せるはにかんだ笑顔も
いつの日も ずっと先を見通している
仏様の表情のように変わらない
ただ ただ 君はまぶしくて 
声もはかなくて 聞こえない

空の景色は変わっていく
色も 高さも 雲とのコントラストも 
同じ空を二度と見ることはできない
高い雲と 低い雲が 入り交じって
太陽の光と 雷の光が 
お互いに打ち消し合って
新しい表情になる
毎日が変化して 毎日が元通り

きっと変わらないものなんかない
もちろん 
変わって欲しくないという願いもあるが
変わるから面白いのかもしれない
変わるから諦められるのかもしれない
でも変わらないもの
変わらないでいてほしいもの
ぼくへの想い 君への想い

アイスを食べよう 
いつだって冷たいアイスだが
絶対溶けない
カチカチの冷たいアイスを食べよう
食べ終わる前に溶けなければいい
大半は溶けてしまっても 
下に垂れなければいい
全部溶けたらきっと食べづらい
きっと必要以上に面倒だ
だけど
どんなに早く食べたって 
溶けるに決まっている
どんなに強く想ったって 
変わるに決まっている
小学生の部・奨励賞
すき

高岡市立能町小学校3年 橋場 來々(はしば ここ)
「おたんじょう日おめでとう。」
と言うそんな言葉すき

「大じょうぶ。」
と言うそんな言葉すき

「遊ぼうよ。」
と言うそんな言葉すき

「きれいだね。」
と言うそんな言葉すき

「楽しいね。」
と言うそんな言葉すき

「おはよう。」
と言うそんな言葉すき

「いっしょに帰ろう。」
と言うそんな言葉すき

「大すき。」
と言うそんな言葉すき

「○○ちゃん。」
と言うそんな言葉すき

「○○くん。」
と言うそんな言葉すき

「はやくなおるといいね。」
と言うそんな言葉すき

「ひさしぶりだね。」
と言うそんな言葉すき

「ありがとう。」
と言うそんな言葉すき

あったか言葉すき とってもすき

いじわるな言葉きらい とってもきらい

世界があったか言葉で 世界がへいわになりますように

かみさまおねがいします。

せんそうやけんか そしてじこがなくなりますように
おねがいします。

ほんとうにほんとうにおねがいします。

かみさま
すき 大すき

かぞく 
すき 大すき

ぼくの妹

高岡市立横田小学校5年 米谷 透真(こめたに とうま)
妹はずるい。
ケンカすると妹が泣いて、ママに言いつける。
そしてぼくがおこられる。妹も悪いのに。

妹はずるい。
アイスを二つ食べようとすると、おこられる。
なのに妹はいつの間にか六つも食べていた。
食べすぎだ。

妹はずるい。
アメをもらう人をジャンケンで決めようとする。
ぼくが勝ったのに、三回勝負と言い張る。
毎回、結局ぼくが負ける。ほしかったのに。

そんな妹のきげんをそこねると
それもやっかいなので
ぼくは妹にそれなりに気をつかって
生きている。

あまやどり

高岡市立高陵小学校1年 有澤 友華(ありさわ ともか)
いえをでて
おさんぽしよう

あめがふったよ
あまやどりしよう

あめがしゃべるよ
ぽちゃ ぽちゃ ぽちゃ

あめがやんだよ
にじでたよ

おさんぽしよう
とこ とこ とこ

いえについたよ
たのしかった

いもうとの顔

高岡市立高陵小学校4年 山本 桧知(やまもと かいち)
いもうとの顔はおもしろい
おきているときは
変顔大会しているみたい
ねているときは
幸せそうにゆめみてる
泣いてるときは
みんなをよんでいるみたい
わらっているときは
楽しそうにニッコニコ
ときどき顔の色がかわる
おこっているときは
うめぼしみたいにまっかっか
いつもおもしろい顔でわらわせて
みんなをえがおにしてくれる
いもうとは家族みんなのたから物

私のたからもの

高岡市立高陵小学校6年 柴 花穂菜(しば かほな)
3才のとき やってきた
ねこ柄だから 「ねこ」と名前を付けた
ずっっっっと昔も今もだいすきな「ねこ」
ふわふわでとっても気持ちよかった「ねこ」
さわった瞬間 ポカポカ気分

小さいとき 泣くと「ねこ」にくっつく
すぐに泣きやみ ニコニコになる私
病気のときはとくに「ねこ」にくるまる
安心して元気をもらった
楽しいときも「ねこ」にくるまる
もっと楽しく気持ちがホンワカ

ベッドだけではなくリビングにも登場する「ねこ」
もってきちゃダメっていうお母さん
こっそりもってくる私
そしておちゃをこぼす私
自分の洋服についたおちゃよりまず「ねこ」をふく

毎日いっしょにねている「ねこ」はじめてはなれた日 宿泊学習
一週間前から「ねこ」とはなれてねる練習
最初の日は なかなかねむれなかった
宿泊から帰った日すぐに「ねこ」にとびついた

8ねんかんずっといっしょ おせんたくするたびに少しずつ
クタクタになってきた
それでもいやしてくれる「ねこ」

これからもだいじにするからね
「ねこ」 わたしのたからもの「ねこ」
中学生の部・奨励賞
あにまるはうす

小矢部市立大谷中学校1年 池田 和依香(いけだ あいか)
私の家は 動物園

ときどき強い ゴリラのお兄ちゃん。
ベッドが大好き なまけもののお姉ちゃん。
いつもおしゃべり さるのお兄ちゃんず。
子ざるの私とペットの犬は いつも仲良し。
おじいちゃんとおばあちゃんは
いつもえらそうな だるま。
でも
お父さんとお母さんは ふつうに人間。

一日十回けんかして
一日十回なかなおり
明日もきっと動物園。

赤い星

南砺市立福野中学校1年 西 祐乃(にし よしの)
僕は悪くない。けど君も悪くない。
赤い星のように他の星とは違うけど
みんなのように輝くことができる。
僕が輝けば、君が輝く。
自信の橋を架けることができる。
僕は人間だから、
毎日自信をもっているわけじゃない。
けど、君が自信をもっていたら、
僕も自信がわいてくる。
赤い星は前よりもっと輝ける。

僕は強くない。けど君も弱くない。
赤い星のように力強くは輝けないけど
新しい星として、
他にはない輝きをはなつことができる。
僕が強くなれば、君を守ることができる。
君は人間だから、
いくら強くても、怖いものもあるし、
にげたいときもあるだろう。
けど、君が強くなくても、
輝けなくても、
にげたくなっても、
僕が君を赤い星にするから、
自由の橋を架けてあげるから、
ずっと輝いてほしい。

絶景

南砺市立福野中学校1年 柄崎 日奈多(つかざき ひなた)
かっぱを着て
かみの毛びしょびしょで
一生懸命こいだ
こいで こいで こぎまくったら
いつのまにか坂の上にいた

そしたら急にまぶしくなって
うっすら目をあけると
光り輝いた

緑がおいしげった田に
一羽の真っ白い鳥がいた
私への
ごほうびのように

まほうのことば

神奈川県立相模原中等教育学校3年 佐藤 知佳(さとう ちか)
世界には、いろんな時間がある
楽しい時間、こわい時間
うれしい時間、悔しい時間
楽しい時間やうれしい時間をつくれる人はすごいと思う
たくさんの人たちをみんな楽しくできたら、もっとすごい

テレビで野球の試合を見た
県大会で、甲子園に行けるか行けないか最後の試合
勝ったチームは泣いていた
負けたチームも泣いていた
おんなじ場所に、うれしい時間と悔しい時間がいっしょになって立っていた
ふしぎ
チームどうしが礼をした
握手して、抱き合った
きっとたのしい時間じゃないんだろうな
それは分かった
たのしい時間も悔しい時間も、おなじ場所でもまざりはしない
なのにすごく長い時間、二つのチームは礼をした
解説の人が「感謝」と言った
かんしゃ
とってもとってもふしぎな感情
たのしくも、うれしくも、悔しくもない
それなのに、どこかあったかい
たのしさも、うれしさも、くやしさもこえて
ただ相手に「ありがとう」と伝える
ふしぎな言葉、まほうのことば
いいな、わたしも言ってみよう
ありがとう

見えない敵

神奈川県立相模原中等教育学校3年 懸山 もも(かけやま もも)
明日は当たり前に来るのだろうか。

誰一人として自分事だとは思っていなかった。
ただ左耳から右耳へ、ただ通り過ぎるだけ。
赤の他人が一人二人と少なくなっていくだけ。
そんなふうに思っていた。

明日は当たり前に来るのだろうか。
 
ある日から突然。
見えないものにおどされる毎日。
鎖に繋がれたような日々。
静まりかえったこの世界で。

明日は当たり前に来るのだろうか。

希望を見つけては、叩き落とされる毎日。
答えのない難問に立ち向かう日々。
薄橙色が白に変わっていくこの世界で。

明日は当たり前に来るのだろうか。

急に、怖くなった。

明日は当たり前に来るのだろうか。
高校生の部・奨励賞
未来

広島県立福山誠之館高等学校1年 坂本 七菜実(さかもと ななみ)
会えないのは
大切な人のためだと知っています
だから私たちはガマンしているのです

マスク姿の写真ばかりなのも
大切な人のためだと知っています
だから私たちはガマンしているのです

私たちの右手にはガーベラが
だって私たちは希望を捨てていないから
コロナなんて気にせずに
みんなで笑える日がくると信じているから

でも左手のクロッカスは枯れそうです
私たちの青春の喜びが消えていきます
せっかく綺麗に咲いたのに
一生で一度しか咲かない花なのに

いつかクロッカスは枯れはてて
ガーベラも枯れはてて
私たちの右手には
彼岸花が握られるのでしょうか
青春も希望もなくなって
諦める日がくるのでしょうか

私は世界中ですずらんが咲くことを
望みます
再び幸せが訪れることを
望みます

大切な人のためにガマンしたのだから
私たちに みんなに
幸せは訪れますよね?

ライオン型のドーナツ

広島県立福山誠之館高等学校1年 中嶋 紗弥香(なかじま さやか)
弟二人は仲良いと思ったら
すぐにけんかしている
早朝 仲良く 
「魚とりに行く」
と出かけた二人だけど
やっぱり一人が先に帰って来た
帰り道で
ジュースをどちらのお小遣いで買うかで
ケンカしたらしい
小さい弟が到着し
兄への不満を滔滔と語っている
その時
大きい弟が袋を抱えて帰って来た
ドーナツだった
小さい弟への不満を述べながら
父母私、自分の皿を用意し
ドーナツを並べていく
小さい弟の席には皿がない
小さい弟は
「自分の分がない」
と泣き始めた

「おまえの分を買うわけがない
・・・なんていうわけがない」
と言って
大きい弟が出してきたのは
小さい弟の好きな
ライオン型のドーナツだった

まだ花の咲かない氷の中に

慶應義塾湘南藤沢高等部3年 石川 胡桃(いしかわ くるみ)
「太陽のように生きろ」
人は輝くため
自分を磨くふりしてすり減らす
いつまでも暗い部屋
カーテンを冷やす冷気
ずっと枯れたままの喉でつぶやいた
「熱く生きろ」
それが容易だった夏は
もう 死んだ
ああ私も
季節と同じ運命を辿ろうか
夜を踊る粉雪に積もられ
永遠の片隅で
体は透けていく
心臓の赤が
剥き出しのまま たよりなく跳ねる
氷の中でも時は流れていく
心が凍りそうな時代は
そっと蕾の中で眠って
陽気な季節に心が晴れたら
パッと瞼を開いてみよう

ひとりぼっちの卒業式

北杜市立甲陵高等学校1年 津金 羽耶(つがね はや)
止まらない時間に生まれた僕らの
去りゆく夜空を閉じ込めた星座盤
重力は効かない 体は心で制御できない
瞬きの間 どれほどの想いを重ねただろうか
浮かんでは消えていく 底のない不安も
時が経ては空を彩るのだろう
ねぇその手を離さないで
僕なしじゃどんな宝石も意味をなさない
ねぇ何処まで行けば君に出会える?
どうやったってわからない
それならここに置いていこう
迷いだってぼくらの背中を押してくれやしないから
泣いたっていいんだよ
弱いと知って強くなった
今 二つの足で星空を走る

消えたいより消したい精神でいこうぜ

富山県立高岡工芸高等学校3年 中村 香音(なかむら かのん)
消えたいより 消したい精神でいこうぜ
誰かを幸せにするために
自分をおろそかにするな

消えたいより 消したい精神でいこうぜ
誰に何を言われようとも
自分を貫け
やりたいことはやる
言いたいことは言う
そうでないと
自分が自分でなくなってしまう

消えたいより 消したい精神でいこうぜ
「自分なんかどうせ」とか
「生きてる価値なんかない」とか
思う必要なんかない

消えたいより 消したい精神でいこうぜ
人が抱えられるものには限りがある
だから
一人で抱え込まないで

消えたいより 消したい精神でいこうぜ
SOSを出せる人ばかりじゃない
それぞれに悩みがあって
理解されない人も
この世界にはたくさんいる

ただ声を上げて 叫ばないだけ
泣かないだけ
気づかないふりをしてるだけ
何かに頼ってないと
生きられない人もいる

消えたいより 消したい精神でいこうぜ
他人に自分の気持ちなんて
わかるわけない
耐えて 耐えて 耐えて
それでもそのことに気づいてもらえない

逃げたいときは逃げ出せばいい
常識や世間体なんて
糞食らえだ

頑張って生きてるのに
君が心から笑って生きていけなきゃ
おかしいよ

君は 君のままで いいんだよ
私も 私のままで いいのかもしれない