第17回(2020年) 入賞者

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原文のまま掲載しました。
ねじめ正一氏選評
 今年はコロナ禍で、例年より応募数は少し減ったものの、詩の内容がとてもよかった。応募してくれた人たちも、全国的に広がっていて、選考意欲がわいた。
 ポエム大賞の小西彩羽さんの「溶け込む」は、朝目を覚ました瞬間からすべての感覚が作動している。さまざまな音や匂い、感触を書いているが、まったく騒がしいところがなく、それが投げ遣(や)りにも見えるが、底の方でぷつぷつ煮えたっているものを感じる。
 富山銀行賞の吉越帆高君の「ねぇちゃん」には、ねぇちゃんへの強い思いがある。それが詩の中の「ねぇちゃんねぇちゃんねねねぇちゃん」という言葉そのものに表現されている。この言葉は、作者とねぇちゃんの日常の関係を表す言葉なのだが、ねぇちゃんはねぇちゃん以上の存在だということがよく分かる。
 小学生部門最優秀賞の若野祥子さんの「おじいちゃん」は、おじいちゃんのことがきちっと書かれている。おじいちゃんが病気が治った喜びも、おじいちゃんが亡くなった悲しさも正確に書いている。
 中学生部門最優秀賞の山中桃子さんの「ガラス人間」は、タイトル通り壊れやすい世界である。壊れたらくっつけ、また壊れたらくっつけしているうちに、やっぱりみんな壊れていく。自虐性と暴力性の繰り返しに、可愛さがあるのが魅力だ。
 高校生の部門最優秀賞の根木小花さんの「ゆがみ」は筆力のある作品だ。歪(ゆが)みがどんどん歪みを呼んで、さらに歪みを増してくる。この歪みにまつわる言葉を引っ張り出す作者に言葉の力があって、歪みというものを注意深く見ながら、言葉を選んでいる。
 今年も素晴らしい作品に出会えて嬉(うれ)しい。
ポエム大賞 北日本新聞社賞
溶け込む

富山市杉原中学校3年 小西 彩羽(こにし あやは)
ふっ
瞼(まぶた)を上げ少し涙を溢(こぼ)して瞬(まばた)きをする
カーテンからもれでる朝陽をあびて

5時3分前
スマホのバイブをすぐ止める
条件反射のような動き
目覚ましで目覚めることは嫌いだが念のため
ブルーライトで脳を活性化される

新聞がポストに入る
新聞の音も好きではないが聞き慣れた音

深呼吸をして肺を膨らませる
カーテンを開け新聞を取りに行く
扉を開く音に気をつけてゆっくりゆっくり

カレーをあたためる
シナモン カルダモン
鼻腔(びこう)に感じるスパイスの香り
一晩眠ったカレーにコーヒーを加える

2階から聞こえてくる母の化粧箱を開ける音
15分後に降りてくる
ご飯の炊けた音がした
アイスコーヒーをいれる
氷にパキパキひびがはいる

さくっとご飯を食べて歯磨きをして
髪をしばる

髪ゴムがピッタリ巻き終われば心もまとまる
筋肉痛になるってくらい何度も結ぶ
靴を履いて肩に片方だけリュックをかける

行ってきまーす

玄関を飛び出してもう片方を肩に通す
二年弱歩いてきた道を無心に歩く

日常に溶けている音や香りに目を向けて
少し感じにくくなったコロンや煙草の香り
音はあまり変わらないかもしれない
かかとをすって歩く音チャイムの音

刺激の足りない毎日に
退屈するわけでもなく悲しむわけでもなく

ただぼーっと毎日が過ぎていく

楽しさ探しだせたら
自然と刺激ある毎日になるかもしれない

ふっ
と、瞼を上げ1日がスタートする

今日はなにしよ?

富山銀行賞
ねぇちゃん

富山市堀川小学校 6年 吉越 帆高(よしこし ほたか)
ねぇちゃんねぇちゃんねねねぇちゃん
いつもちょっかい出し合って
わぁわぁ喧嘩(けんか)もするけれど
困ったときはヒーローさ

勉強ちょちょいと教えてくれる
僕の車椅子もすーいすい
困った時のねぇちゃん頼み

ねぇちゃんねぇちゃんねねねぇちゃん
「それは違うよ?」なんて言ってきた
だから「うるさい!」って言っちゃった
どうしよう ねぇちゃん行っちゃった

話しかけてくれる人がいない
当たり前の人がいない
シーンとした空気

ねぇちゃんねぇちゃんねねねぇちゃん
寂しい気持ち 怒りに勝って
「ねぇちゃん ごめんね」
「仕方ないなぁ まぁいいよ」

「帆高って生意気だね」
なんてねぇちゃん言うけれど・・・
それはねぇちゃんだからだよ

ねぇちゃんねぇちゃんねねねぇちゃん
毎日いろいろあるけれど
それでも結局大好きさ
ねぇちゃんいつも

ありがとう

最優秀賞
おじいちゃん

高岡市立平米小学校 2年 若野 祥子(わかの しょうこ)
「ただいま」
体そうふくのまま
はじめて見たおじいちゃん

つるつるのかお
まがっていたひざもまっすぐになった
ぎゅっとしていたうでもまっすぐになった
丸いせなかもまっすぐになった
こんなに大きかったんだ、おじいちゃん

「いたい、いたい」もきこえない
左の目からながれるなみだもなくなった
オレンジ色のふくろのポタポタもきえた
いつもの音がきえた、おじいちゃん

まっ白なお花
まっ白なきもの
まっ白なふとん
ぜんぶ、まっ白になった、おじいちゃん

空にむかって
サンダルウッドのリボンがまっている

すてきなおじいちゃん
見えるよね、きっと

ガラス人間

高岡市高陵中学校 1年 山中 桃子(やまなか ももこ)
僕の友達は
ガラスでできた人間で

嬉しくなると
温まって

かなしくなると
冷たくなって

傷つけると
欠ける

ある日その子が
なぐられて

欠けたガラスを
ボンドでくっつけた

また欠けたら
くっつけて

繰り返していくうちに
ボロボロになった

結局は粉々にくだけ散って
どうしようもなくなった

割れないようにするには
どうしたらよかったのか

そもそも割ったやつが悪いんだ

そいつは木だった
斧を使うと簡単にふき飛んだ

木くずで汚れた手をぬぐうと
僕のさびの生えた手があった

じきにボロボロと
僕もくずれて・・・

彼らのもとへと
飛んで行く

ゆがみ

富山県立高岡高等学校 2年 根木 小花(ねき こはる)
点を描く 手がずれる
歪(いびつ)になる
線を描く 筆がゆれる
歪になる 
円を描く 軸がぶれる
歪になる
四角を描く 線がはみ出る
歪になる
花を描く 均衡が崩れる
歪になる
猫を描く 目が離れる
歪になる
人を描く 指が増える
歪になる
犬を描く 鼻が曲がる
歪になる
空を描く 色が濁る
歪になる
森を描く 木が消える
歪になる
海を描く 毒であふれる
歪になる
川を描く 魚が浮く
歪になる

自分を描く 他と違う
歪である
自由を描く 見あたらない
歪である
縁を描く 薄汚れている
歪である
神を描く 消えてしまう
歪である
明日(あす)を描く 真っ白である
歪(ゆがみ)さえない

優秀賞
カラスの鳴き声

高岡市能町小学校 6年 髙田 拓海(たかた たくみ)
ぼくは休けいをしに電線にいつも止まっている
下を見たら男の子がいた
するとその子はカーカー鳴きだした
ただ鳴くだけで何を言っているか分からない
けれど言葉も通じる子供もいる
その子はぼくと会話をしてくる
でもと中からだんだんこわくなってきた

ぼくはいそいでその場をたち去った

こねこねこねこ ねこじゃらし

射水市小杉小学校 3年 今牧 茉優(いままき まゆ)
こねこねこねここねこじゃらし
こねこねこねここねこじゃらし

こねここねこね
ある日とつぜんこねこじゃらし

こねこねこねここねこじゃらし
こねこねこねここねこじゃらし

ねこが大好きねこじゃらし
バッタも大好きねこじゃらし

こねこねこねここねこじゃらし
こねこねこねここねこじゃらし

ねこじゃらねこじゃらクッキング
ハンバーグこねこね
こねこ大好きハンバーグ?
こねこはキライ
食べられない

こねこねこねここねこじゃらし
こねこねこねここねこじゃらし

ねこがねっこをひっぱった
めげずにころりん
ねころがる

こねこねこねここねこじゃらし
こねこねこねここねこじゃらし

こねこがねんね
ゴロゴロニャー
みんなですやすやねんねこりん
あしたはどんな日
ねんねこニャー

おそろしい敵、M

小矢部市石動中学校 3年 佐藤 日菜子(さとう ひなこ)
ピピピッ ピピピッ
隊長!
ピピピッ ピピピッ
大変です!すぐそこまで迫ってきてます!
ピピピッ ピピピッ
安心したまえ オータス君。
ピピピッ ピピピッ
あれは頭のほうを撃つとおとなしくなる。
ピピピッ ピピピッ
やれるでしょうか、僕に・・・
ピピピッ ピピピッ
やれるとも。落ち着いて、狙いたまえ。
ピピピッ ピピピッ
どかん!
ピピピッ ピ・・・
どうでしょう、やりましたかね⁉
・・・ ・・・ ・・・
やったな!作戦成功だ!
やった‼やった‼
・・・ ピ ・・・ ピピピッ
え⁉ 隊長‼ まだ生きてますよ!
ピピピッ ピピピッ
ええい、しつこいやつめ。
ピピピッ ピピピッ 
しかも、今度は頭が見えません!
ピピピッ ピピピッ
しかたない、今日はここまでだ。行くぞ!
ピピピッ ピピピッ
ピピピッ ピピピッ カチッ
「ん~まだねむいよ… …え⁉8時⁉」

ロングスカートは戦っている

吉祥女子中学校(東京)3年 鹿子木 理子(かのこぎ りこ)
ロングスカートは戦っている
夏風になびきながら戦っている
水を泳ぐ魚達(たち)が鮫(さめ)から逃れるように
オレンジ色のか弱い生地を波打たせて
戦っている

ロングスカートを穿(は)く貴女(あなた)は
これからどこに行くんだろう
会社 学校 お出かけ
どこでもいいよ

たとえ貴女がどこに行っても
貴女の尾びれが色褪(あ)せないよう
水の魚に負けないよう
いつまでもいつまでも
ロングスカートは戦っている

呼吸するふくらはぎ

愛知県旭丘高等学校 1年 渡邉 美愛(わたなべ みえ)
目の前に崖があれば
私は飛び降りてみたい
大気に身をさらして
岩に頭をぶつけ
重力に軋(きし)む体で
腹の底から笑ってみたい

人の心には
鍵穴があると思う
他者と
社会と
世界と関わるうちに
ひしゃげ、溶かされ、もげ
熱い鉄で打たれて
いつの間にかみんな同じ型

地を見ることも
空を見ることも好き
道端の石ころは
宝石よりも何倍の価値がある
喉が渇けば西瓜(すいか)を食べたいし
泣きたい時はエアーズロックに行く
空の明るい部分に落っこちながら
国歌を放ったりしたい

進化する営みよ
私はお前に抗(あらが)っていよう
スーツにひっこんだ体で
窮屈そうに街をゆく人の反対へ
裸のまま駆け出してやろう
己に背中あずけて

今日という日は巡る
何事もなかったように
地につけた足が風を切る度(たび)に
私は笑った
灰色の町並みを踏んで
心はどこまでも高く緑へ飛び
宇宙に在る私の心よ
在ったはずのあなたへ

きらきら

岡山学芸館高等学校 3年 川上 紗和(かわかみ さわ)
女子高校生の矜持(きょうじ)なんて
神様の前じゃぜんぜん持たなくて、
破裂したガムみたく顔面に張り付いたまま。
舌で取ろうと思っても
歯で噛(か)み切ろうとしても
汚物は顔面についたまんまで、
いずれ私のものとなっていく。
いつかは喉に張り付いて窒息しちゃうし、
気管と胃にねばねばが侵入して
最後は穴を開けて私の身体を侵食するのだ。
でもそれでいいの
だってまわりもそうだから

佳作
どこかは かならず うごいている

渋谷区立千駄谷小学校 1年 藤原 維人(ふじわら いと)
じっと たちどまると 
うごいていないと おもうけど
どこかは かならず うごいている
一日一日 ずうっと まいにち 
ねていても うごいている
それは こころだ

こころは いつも とまっていない
もしも こころが とまってしまったら
生きられない
あおい空を みあげてみると
こころが みえる かもしれない
こころは ハート じゃなくて
もっとちがう かたちだと おもう

ぼくのあいぼう

高岡市立能町小学校 6年 横溝 ユキ(よこみぞ ゆき)
だれかが来た
ん? ぼくを選んだ‼
やった やった やった やった
ありがとう、名前は?えっまだ?
しょんぼり しょんぼり でもうれしい
大きい鉄の固まりに乗って、うわーこの固まり
うごくぞ⁉ すげぇかっこいい
うん?止まったぞ?  着いたのか⁈
子供がいる すごいなでてくる。
あーそこそこめっちゃきもちいわ
うん?名前はライト?きにいったきにいった
ぼくはきみとずっといっしょにいるよ
よろしくぼくのあいぼう

ぼくのママ

高岡市立博労小学校 2年 松原 輝(まつばら てる)
ママは やさしい とってもやさしい
ふくをかってくれたり しゅくだいを
おしえてくれたり おもちゃをかってくれたり
とってもやさしい でもね ママは、
おこると こわい とてもこわい
うそをついてはいけない
人のせいにしない
ありがとうとごめんなさいを言う
人をきずつけない
じぶんをきずつけない
ママとのやくそく
やぶると ママは おににへんしん
かおは赤くなって あたまにつのがはえる
目は三かく 「てる」と大きなこえ
でも ちょっと かなしそう
そして ぼくも ちょっと かなしい
いつも にこにこ なかよしが いい
なかよしが うれしい

おつかい

富山市立芝園小学校 4年 石黒 夏海(いしくろ なつみ)
かあさんに たのまれた
パンと アイスとぎゅうにゅうを
かってきてねと たのまれた

行く道は ぴょんぴょんぴょん
海こえ 山こえ 谷をこえ
ゆう太君にも 出会ったよ

帰りの道は どん どん どん
荷がおもくって とべないよ
谷こえ 山こえ 海をこえ
しばらくあるくと まいごねこ

家帰ったら どなられた
パンは アイスは ぎゅうにゅうは?
ねぎも いもも いらないし
ねこはひろうなと言ったでしょ

はな火

坂井市立三国西小学校 2年 荒野 寧音(あらの ねね)
おはなのようなはな火
ちりちり
おひさまのようなはな火
ちろちろちろ
りぼんのようなはな火
ひゃらひゃらひゃら
くさのようなはな火
しゃらしゃらしゃら
おつきさまのようなはな火
ちらりちらり
いとのようなはな火
しゃーしゃーしゃー
ゆきみたいなはな火
しゅーしゅーしゅー
たんぽぽのようなはな火
しゅわーしゅわー
でんきのようなはな火
ぴちぴちー
うさぎのしっぽのようなはな火
しりしり
まっくろくろすけのようなはな火
しゃりしゃり
みみかきのようなはな火
しわしわ
ほうきのようなはな火
しゃらーしゃらー


小矢部市立大谷中学校 3年 池田 玖侑香(いけだ くゆか)
筆箱の名前を聞かれた。
私は少し考えて
「募集中」
と答えた。

筆箱の名前を聞かれた。
真っ黒な耳に茶色いボディ
少しくたびれた
犬の形をしたそいつの。

筆箱の名前が決まった。
「詩」と書いて「ポエム」と読むらしい
名付け親の彼女は
キラキラネームってヤバイね
と笑った
私もそう思う。

筆箱を失くした。

ロッカーも
カバンの底も
ひきだしの奥も探したけれど
見つからなかった。

筆箱が見つかった。
理科室の忘れ物置き場のカゴに
そいつは座っていた。

筆箱の名前を聞かれた。
私は少し考えて
「詩」
と答えた。

筆箱を変えた。
そいつは今日も
部屋の棚の上に座って
私の帰りを待っている。

一日の四字熟語

小矢部市立大谷中学校 3年 小橋 拓夢(こばし ひろむ)
朝ねぼうして行くぞ学校 疾風迅雷
ギリギリ間に合い 危機一髪
宿題忘れて 絶体絶命
母が届けて 起死回生
1限国語 漢字が分からず 無味乾燥
2限数学 答えが分からず 試行錯誤
3限体育 長距離走 竜頭蛇尾
4限社会 全く分からず 悪戦苦闘
次は給食 メニューが楽しみ 一喜一憂
昼休み 受験に向けて 粒々辛苦

5限美術 作品完成 自画自賛
6限英語 単語を覚えて 切磋琢磨
次に掃除 ぞうきんぬらして 東奔西走
委員会 意見を言うが 支離滅裂
下校時 車が来るぞ 神出鬼没
家に着き あいさつかわし 意気投合
机に向かい勉強決心 一念発起
go to bed夢の中では 奇想天外

翌日大ねぼう いぞげ学校 電光石火

カツ舌

小矢部市石動中学校 3年 西 凪砂(にし なぎさ)
私の 人生 滑舌 人生
今日も 危機的 奇奇怪怪

私の口じゃ 
かえるもぴょこぴょこできないし
麦 米 卵も 火を通さなきゃ
東京からの特許が消えて
パジャマも ずっと 黒パジャマ

STは えすちー
一時間目は いヂヂかんめ 
これじゃぁ いつか 日直の進行
かむ かもしれない

ゴジラは ゴリラ
しゅつどうは ジゅウどう
これじゃぁ いつか ヒーローへの指示だすとき
かむ かもしれない

ブラックホールは ブラックこーひー
たいようのばくはつ は たいりョうの ハくチズ
これじゃぁ いつか 地球に終わりが来たとき
かむ かもしれない

わたしの ジンせい カツゼツ ジンせい
キョうも キキてき キキカいかい



今日 御昼ノ 放送ダ

「地味に」とはなんでしょうか

高岡市立高陵中学校 2年 松島 和泉(まつしま いずみ)
机の角に足の小指をぶつけた

地味に痛い

シャー芯床にぶちまけた

地味にめんどくさい

肘を壁にぶつけてしまった

地味に痛い

この「地味」はどうしたら

普通の「痛さ」になるんでしょうか

生傷などになったら

普通の「痛さ」なのでしょうか

大量に宿題がでたら

普通の「めんどくさい」なのでしょうか

私は意味もなくこう思いました

「普通」より「地味」の方が

「格上じゃね?」と

忘れもの

上市町立上市中学校 2年 松田 真依(まつだ まい)
私は忘れものをした
プールの塩素のにおい
遊園地に広がるさけび声
山の恐怖をおぼえるくらいの透明な空気
でも、海のいその香りがしみこんだ服は
ちゃんと持ってきた
顔をしかめるくらいの服のにおいは
夏の思い出の「あかし」のようでうれしかった
今年のもちものチェックリストは
チェックの数が少なくて悲しい
だから、私はそれを来年の宿題に変える

こうして、私は季節が変わるごとに
思い出を心のリュックにつめ
「大人」への道へ遠足にでかける
今の目的地の「大人」に着いたらどこに行こう
この生きる糧となっているリュックがあれば
いつでも、どこにでも行ける気がする

そんな思い出、学びがつまったパンパンの
リュックを想像しながら、私は今を強く生きる

ワタシ、キレイ?

白百合学園高等学校 3年 矢追 有理(やおい ゆり)
おばあちゃんは明眸皓歯なのよ~
おばあちゃんはふざけた感じでこう言った
なんじゃそりゃ
メイボウコウシ?
当時の私には見当もつかない表記、意味
素晴らしい文明の利器
スマホなるもので即検索
「澄んだ瞳と揃った綺麗な歯
楊貴妃の美貌を形容した語」

うわお。

言い過ぎだよおばあちゃん~
……とは言えなかった
だって悔しいけどほんとうなんだもの

目を見ると全てを見透かされる感じがして
ドキッとするのは事実
そして愛嬌があるんだもの
べた褒めします

ふふふ
書いててニヤける

孫ができたら
いつか私もふざけて言ってみようかな
何言ってるの~!って言われるかな

ネットの時代は便利だけれども
昔の素敵な言葉が消えてゆく気がする

それならば 伝承しましょう この言葉
「おばあちゃんは明眸皓歯」

恥ずかしいから
これがおばあちゃんに
読まれないようにしなくちゃね

脱皮。

西宮市立西宮高等学校 1年 青木 日向子(あおき ひなこ)
炭酸を一気に飲み干したら、
夏。
自転車で坂を駆け下りるとき、
私は誰にも気付かれずに
風きる白馬になっている。
フェンス越しに見たグラウンドには
誰かの青春の切れ端が落ちています。
教室の窓ガラスには
誰かの叫びがうっすらと残っています。
嗚呼私、今を愛しているよ。
遠くできこえるチャイムの音は
私たちを縛る優しい縄。
図書室を満たす静けさは
行き場をなくした想いの保管場所。
夕暮れの中、
ふたりの影は伸びてゆく。
嗚呼私、今を愛しているよ。

それでもいつか、私たち、
脱皮をしなければいけない。
制服を脱いで脱皮をすれば
私たちは「大人」になってしまう。
古い卒業アルバムを焼き尽くすように
友人の名前を、笑い方を、
息づかいを忘れる。
それを忘れてゆく代わりに
どうでもいいことを記憶に刻んでいく。
嗚呼私、今を愛しているよ。
つまらない言葉で人生を汚さないように
16の夏に縛られていたい。
「愛」だの「恋」だの「希望」だの
そんな言葉を安売りなんてしたくないから
16の夏に縛られていたい。

私が脱皮をするならば
美しい色の蝶になりたい。
さなぎをそっと破ったら
いつまでも子供の頃のまま
青くて薄い翅を広げ
ゆっくりゆっくり飛んでゆこう。
弱々しい羽ばたきは
大きな世界で人に傷つけられないためです。
自信のなさそうな飛び方は
社会の規律に汚されないためです。
脱皮したって私たち
子供の頃の翅のまま。
今を、愛していよう。

おとなのかお

富山県立富山高等学校 3年 森谷 友惟(もりや ゆい)
「若いって素敵ね 明日があるものね」
確かに僕は17で無謀な夢も見るけれど
今日を積み重ねた先に
明日があるとも知っている
いくら明日が明るくて
すべてが手に入るとしても
僕は今日を生きている

大人は自分の面影を 僕の中に重ねては
何かにつけて「青春ね」
微笑みながら言うけれど
退屈顔で生きているくせに
そんなしょうもない言葉で僕の毎日を
片付けようとしないでよ

その時の大人の都合で自由自在
オトナとコドモの境界線
「まだ」と「もう」を使い分け
いつも僕を惑わせる
ほんとに器用なひとたちめ
だけどこっちにも手はある
無邪気ぶったりもするし
物分かりのいいフリもする

いちいち大人の言うことに
つっかかりたくはないけど
子供にも大人にだってあぶれてる
僕は何者なのかって
ときどき考えたくもなる

でも
いつか今日よりもずうっと
大人びた瞳をして
今日の自分を懐かしむ日が来ることも
知っている

今日の僕の思いとか涙はなかったことにして
「生まれた時から大人です」
みたいな顔で歩く日が来ることだって
知っている

駅前にて

富山県立高岡高等学校 1年 金森 智己(かなもり ともき)
うっかり砂糖水になったコーラを
こぼしちゃった僕たちは、
毎日のらりくらり。

ほんとはもっと、
いろんなことを考えてたのに
どこまでも
どこまでも流れて、

せっかくの柿の種も
湿気ちゃったね。

なにしろ揃えた筈のズックは
もうこんがらがって
誰のものだかわからないのだし

これからどこへ行こうか

窓の外
月の笑うささやかな夜に
うつらうつら、夢を見ている。

言ったって

富山県立高岡工芸高等学校 3年 橋本 鴻睴(はしもと こうき)
ちゃんと 言ったって
焼きプリンって 言ったって
クリームなんて 乗せないで

昨日の夜 言ったって
遊びに行くって 言ったって
勉強しろなんて 言わないで

なんでもないって 言ったって
泣いてないって 言ったって
不安な顔なんて 見せないで

いつもありがとうって 言ったんだよ
心配してくれて ありがとうって
恥ずかしいから 二度と言わせないでよ

奨励賞
コロナウイルスへ

奈良市立青和小学校 5年 山本 嶺央(やまもと れお)
いま地球は君のせいで大変なことになっている
なぜ君は突然現れて、仲間を増やしているのか?
人間が食べ物を残したり、粗末にしたりして
人間にバチを与えたかったから?
プラスチックごみを捨てたり、資源を無駄使いしたり、
地球をいじめたお返しなのか?
ボクたちの学校をとめてうれしい?
いろんなスポーツや音楽活動もなくしたかったの?
なんでたくさんの人を病気にしたいの?

いたずら感覚でやっているなら、その遊びは
もうやめてください
どうしたら君は世界から、地球から消えてくれる?
食品ロスはやめるよ
地球も大事にする
環境のこと、君のこと、もっとたくさん勉強するよ
人間が悪かったのなら反省する
だからもうこれ以上、ボクたちから何かを奪わないで

「カエル」

湖西市立新居小学校 4年 渡邊 幸(わたなべ さち)
カエル
考える

火曜日は
カチューシャ着けてどこ行こう

仮面をかぶって
かっこよく

カーニバルで踊りましょう
歌舞伎役者と踊りましょう

風のように
母さんのもとへ

帰って
かつ丼を食べよう

大じいちゃんと僕

越谷市立蒲生南小学校 4年 小高 咲人(こだか さきと)
去年の夏休み大じいちゃんがなくなった
家がはなれているのであんまり会えなかったけど
大好きだった
しかられたこともあったけど うれしそうに
頭をなでてくれた

いつまでも生きてると思っていたので
油断していた
びっくりした
くやしかった
なみだがでた

僕は大じいちゃんが家を出るまでずっと
そばにいた
ごはんと水と花をそなえた
部屋のそうじもした
大じいちゃんを守った

今年の夏やっとお墓参りに行けた
大じいちゃんのいない高岡はつまらなくて
さびしかった
もう会えないかもしれない
でも来年も来るよ大じいちゃん

なつのかんらんしゃ

福山市立駅家小学校 2年 中嶋 蒼太(なかじま そうた)
ゆうえんちの 
かんらんしゃにのった
ゆっくりゆっくり
お日さまほど高いところにいって
ゆっくりゆっくり
おりてきた

ぼくは
ひからびて
ひものになった

すっきりしたな、あのときは

坂井市立三国西小学校 2年 広瀬 優香(ひろせ ゆうか)
がんばって、せいりをした
「ガサゴソガサゴソ」
と、いう音がした
たのしくなってきた
たのしくなると、気もちがいい
もっとせいりがしたくなる
たのしく「ガサゴソ」
とり出して、つつの形のはこに
えんぴつや、ケシゴムを入れて
きめたばしょにおいたら
かんせいしたよ
せいりって、気もちがいいね

壊れる

小矢部市立大谷中学校 3年 堀 瑠華(ほり るか)
もし私がさわったこともない物が壊れたら
私はどう思うだろう
もし私の一番大切な物が壊れたら
私はどう思うだろう
もし私が知らない他人が壊れたら
私はどう思うだろう
もし私の大切な人が壊れたら
私どう思うだろう

もし私が壊れたら
みんなはどう思うだろう

「がんばる」の源

加藤学園暁秀中学校 2年 木内 花菜子(きうち かなこ)
同じ景色 私の席は決められていて
毎日座って授業をうける
たまに疲れる時だってあって
「虫が入ってきた‼」
たった1分の休憩時間 獲得したら
それだけでちょっと良い授業なんて
そんな事を思っていて

いつか友達に聞かれた
「春、夏、秋、冬いつが好き?」
私は答える
「夏じゃない?」
それから思い出してみる

私の心がソワソワする時
まるで運命が決まるかのように
クラス発表はドキドキで
大好きな特別な体育祭
走順を待つあの緊張は
今でもハッキリ思い出せた
なんかいつもドキドキしてる
その感覚がたまらないんだ 春

外でみんなでバーベキュー
その後そのまま花火して
色んな夏フェスかけまわって
ねっころがってアイス食べて
一年で一番長い休みは
思い出がたくさんよみがえって
暑い暑い言っても 結局
戻りたくなるんだ 夏

ハロウィンの雰囲気って
この時のテーマパークは私の大好物
流れてる音楽も服装も
怖くて面白かった思い出
楽しいよな 秋

マフラーに包まれ歩いた暗くて寒い道
だけどそこが光に包まれて
キレイなイルミネーションの景色
家族恒例のイベントだって
紅白も駅伝も全部全部
最高だよ 冬

いっぱいしてるな 楽しい事
楽しい事してるんだから嫌な事もがんばろう
私の心は燃えてきて
次も私は席について
でもやっぱり疲れてきて
「冷房つけてくるね」
たった一分の休憩で喜ぶ その繰りかえし
何年か後も 楽しい思い出たくさんつくろう
嫌な事もがんばってこ~

結局私は言った
「やっぱ 冬‼
だって冬服っておしゃれじゃん?」

うちはペットを飼っていません

小矢部市立石動中学校 3年 中野 陽菜(なかの はるな)
うちは ペットを 飼って いません
家族は みんな そう言うけれど
うちには 金魚が 2ひき います
エサも ちゃんと やってるけれど
みんな わすれているみたい

うちは ペットを 飼って いません
死んだ すがたを 見たくないって
家族は みんなそういうけれど
金魚も いつか 死ぬものです
金魚は どうでも いいのかな

うちは ペットを 飼って いません
この前 一ぴき しにました
うちに来てからの六年間
これで ほんとに よかった のかな
それでも お庭に 埋めてあげました。

それは、ヤバいね

南砺市立井口中学校 1年 東 英里香(あずま えりか)
「ねぇねぇ、お母さん」
不安なことがあると、相談する
「大丈夫やよ」ってフォローしてほしい
でも、いつも返ってくるのは
「それは、ヤバイね」

不安にさせてることに
気がついてるよね
勇気づけてほしくて
相談してるんだから
知っとるでしょう

「うそでもそう言ってよ!」
「分かったよ」
そう言った直後から
「それは、ヤバイね」
私を不安にし始める
「今言ったこと聞いとった?」

「ごめんごめん」
ニコニコしながら謝っている
あきれてしまってしかたがない
けど、また相談してしまう
今度は すごくいいことだけど

「それは、ヤバイね」
いいのかわるいのかわからない
お母さんは私を不安にさせる
悪気のないお母さん
ちょっとは私をフォローして

私の願い

糸満市立三和中学校 2年 平田 永愛(ひらた えな)
知っていました 知っていました
あなたはわたしのあなたじゃなくて
みんなのあなただということを。

分かっていました 分かっていました
あなたはわたしのシンユウじゃなくて
みんなのトモダチだということを。

知ってるんです 知ってるんです
オトナに近づくわたしたちはもう
あの頃のわたしたちじゃないんだって。

分かっているんです 分かっているんです
わたしがはなれればあなたはジユウで
あなたがそれを望んでいるって。

でも、いやなんだ
わたしだけが、それがいやなんだ。
あなたの優しさにすがっても
逆に私が苦しくなるんだ

どうしたらいいんだろう
もがいて もがいて 苦しんでも
ただ ただ ただ ただ 悲しくて
だからもう、終わるんです。

知りました 知りました
わたしがはなれればいいってこと。
だから、だかラ、だカラ、ダカラ

分かりました 分かりました
わたしは今からはなれます。
あなたのもとからはなれます。

知ってください 知ってください
わたしは幸せを願っています。
あなたの幸せを願っています。
あなたが幸せなら、わたしは大丈夫。

分かってください 分かってください
わたしはあなたが好きでした。
あなたの笑顔が好きでした。
あなたが笑顔でいれるなら、私は大丈夫。

どうか、振り返らないで
どうか、とどまらないで
どうか、幸せでいて
どうか、笑顔でいて

私の願いはただそれだけ

バイバイ
さよなら。
お元気で。

18歳の夏

東京学芸大学附属高等学校 3年 島崎 千枝(しまざき ちえ)
18歳の夏が終わる
特に何もなかった夏
暑さに目が覚めた虚しさ
深夜に飲んだぬるい麦茶
それから私の誕生日と
「おめでとう」と言えなかった
あの人の誕生日
それ以外特に 何もなかった夏

参考書を閉じて表へ出てみた
吸い込まれるほどの夕焼けがあって
ひぐらしがどこかで鳴いていて
遠い記憶の彼方から 誰かが手を振っていた
思わず手を振り返して そして
どうしようもなく孤独なことに気づいた

もしや私は 記憶と二人きり
誰かと心が触れ合った瞬間を繋いで
今日もなんとか生きながらえている
もしや私は 人生で一人きり
その記憶さえ 私の中の虚構だとしたら
今までも そしてこれからも

泣いた
大声で泣いた
18歳のくせに 迷子のように泣いた

微生物

兵庫県立農業高等学校 3年 野元 咲良(のもと さくら)
まるいガラスに寒天注ぎ
そこに貴方をそっと置く
けれど見えない貴方の姿
でも信じている貴方の存在
そっと覗いた顕微鏡…
やっぱり貴方はそこにいた

いつになったら見えますか?
そっと耳をかたむけた
むぎゅむぎゅ むぎゅむぎゅ
増えてゆく
むぎゅむぎゅ むぎゅむぎゅ
確実に

焦ることはいけません
そっと耳をかたむけて
もごもご もごもご
増えてゆく
もごもご もごもご
広がってゆく

こうして時をそっと待ち
培地の上に貴方を見つける
大き過ぎる可能性
広がってゆく貴方の存在
そっと覗いた顕微鏡…
やっぱり貴方はそこにいた

忍耐

東京朝鮮中高級学校 高級部 1年 金 英輝(きむ よん ふぃ)
あぁ まただ
あいつらだ 
また彼を傷つける
彼を助ける人はいない
聞こえる彼の心の声
(耐えなきゃ 耐えなきゃ)

おはよう
彼が笑顔で言ってくる
彼がくれた大粒のダイヤモンド
僕も笑顔で返す

わぁ 転校生だ
美人な女の子だ
席は彼の隣
さっそく打ちとけてる
(やったね やったね)

おはよう
聞こえてくる二人の男女の声
目を開けると彼とあの子
いつもよりきれいなダイヤモンド

痛い
あいつらだ
僕に何する
彼への嫉妬か?
あの子をとられた悔しさか?
僕の手と足がちぎれていく
(耐えなきゃ 耐えなきゃ)

ガチャン

ガラスが割れる音がした

梅雨

富山県立高岡工芸高等学校 3年 水野 遥菜(みずの はるな)
スカートやローファーに
雨が染みこむたびに
心までずっしりと重たくなる
すっかり重たくなった心からは
とめどなく不満が零れ落ちてしまう
まるで梅雨の空みたいに

しきりに前髪を気にしている女子高生も
すれ違いざまに傘をぶつけて
走り去っていくサラリーマンも
なかなか迎えに来ない母親に
苛立って電話している男子高生も
きっと足元に
大きな水たまりができているのだろう
私の水たまりも更に深くなる

まったく いつになったら
この長い長い梅雨は
明けてくれるのだろうか

また生ぬるい雨粒が落ちてきた

ぎゅっと

立命館慶祥高等学校 1年 清水 綾乃(しみず あやの)
だきしめてくれ
かわいいの言葉はくすぐったいけど
オレは役にたてればそれでいい

だきしめたまま
眠るアンタの髪を撫で
おやすみ、声にならないあいさつを
ばれちゃだめ、ばれちゃだめ、

だきしめないの?
背中のかべは温もりをわすれた無機物、
深夜一時を告げたラジオ、
あともう少し、とつぶやくアンタ、
だいじょうぶ、オレはアンタを応援してる

もういいの?
アンタは匂いだけを残していった。
いってきます、は さようなら、なんだよ
今もどこかでがんばっていますか。

 耳、ちぎれて片方はどこかへ
 腹、しろい綿がまわりに散らばって
 思い出、オレだけが忘れずに

だきしめられはするけれど
オレはアンタをだきしめてやれたのだろうか
遠くはなれていく 家だったらしい家も
今、はじめて見たよ

さて次はだれを
だきしめる旅に出ればいいですか?
アンタ以外のだれを
だきしめればいいのですか?