第18回(2021年) 入賞者

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ねじめ正一氏選評
 コロナ禍でも詩を書こうという意欲に胸を打たれるわけではない。コロナ禍でも読みたくなるような詩があるから、胸を打たれる。小中高と分かれているが、それは便宜的なことで良い言葉は年齢を超えてくる。
 ポエム大賞は渡邉和子さんの「目視」。この詩は一見、言葉が派手に見えるところもあるが、正確である。どの言葉ひとつ取っても無意識に書いていない。「髪を切るって、フィルムを刻んでいくみたい」「いうことを聞かない頭の中は、かりんとうでできている」。正確というのは正しいことではない。人の細かな神経にひりひり触ってくる。
 富山銀行賞の島崎翠月さんの「バスケの試合の日の朝」は動きが楽しい。それもすべてバスケにつながってくる。「シュートの練習をするために家の後ろに行こうとするとカエルがたくさんいて朝ご飯を食べていたのでそこを通るのも申しわけなかったので回り道をして後ろへ行き、シュートの練習をした」。バスケに追われながら追っている。バスケの動きが笑える。ユーモアのかたまりの詩である。
 小学生最優秀賞は岩佐葵さんの「おばあちゃんのノート」。最初は日記、次は健康カード、その次は取り扱い説明書、次は家族の名前になる。書くことが違ってきて、最後は「おばあちゃんが私を 忘れないように」のフレーズに胸が熱くなってくる。
 中学生最優秀賞の平田永愛さんの「どっか行けっ。」は悔しさに満ちあふれている。自分ながらの言葉でつらい別れの決着をつけたいのだ。納得いく別れの言葉をやっぱり「どっか行けっ。」に見つけ出すのだ。最初の「どっか行けっ。」と最後の「どっか行けっ。」は、同じ言葉でも意味が違ってきている。
 高校生最優秀賞は小西彩羽さんの「社畜の王」。社畜という言葉は強烈だ。そして、作者は社畜という化け物の存在を定義したいのだ。最強の社畜をあぶり出して、「私にとって父は 最強な社畜の王の一人だ」と書いている。

ポエム大賞・北日本新聞社賞
目視

神奈川県立相模原中等教育学校 2年 渡邉 和子(わたなべ わこ)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
 ぱちり

 雨の日は、どんなに馬鹿なこともできちゃう気がする、無敵。
 晴れの日のみちには灯りがないのに、雨の日は足下に灯る燈があるの、ぽぽぽ。
 どんな本も、色と、温度と、水、そして数多の音でうまってる、五感フル活動。
 絵をかくときは、いろんなものを与えてくれる泥に溺れてる、ごぽっ。

 ぱちり
       
 夢の中でも、無条件で空に立てることはないの、現実主義。
 月にいるウサギは、きっと時計ウサギ。だって、思考をとめて時間だけ進めていく。
 アイスティーの中には線香花火がある。氷の音と、パキン。
 車は凍えた冬よりも、芽生える春が似合いそう。静か、しずかに、穏やかに。

 ぱちり

 忘れる時って、頭に花がかぶるみたい。くゆる、次第に降り積もる。
 夜中って、静かな鏡の中みたい。なのに自分がくっきり浮かぶ。
 髪を切るって、フィルムを刻んでいくみたい。ザク、ざく、ばらっ。ざっくばらん。
 あの世に迎える彼岸の花は、枯骨を着飾るドレスみたい。バレエのように、ひら、ふわり。

 ぱちり

 いうこと聞かない頭の中は、かりんとうでできている、かしゅ、かしゅ、くしゃり。
 あたまを、水に浸して流される、ただし疲れたとき限定。
 頑張る人のおめめには、金平糖が光ってる。吸い込まれてく、ちか、ちか、ぱちっ。
 ビルから見える星空は、おっきな鯨が浮かんでる。じゃあ、ここは海なのか。

 ぱちり
 ぱちり

 ぱちり

 よく、みえる。
富山銀行賞
バスケの試合の日の朝

高岡市立能町小学校 6年 島崎 翠月(しまざき みづき)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
 朝早く、父や母に起こされいやいや起きる。まずおしりを上げてねこのような体勢になる。そしてゆっくり起きようとするけどまたねる。そしておこられる。完全に起きたらご飯を食べる。半目になりながら死んだ魚(ヒラメ)のように食べる。食べ終わったから歯みがきをしようと思ったけど手を動かすのはめんどうだから顔を動かしてみがいた。歯みがきをしながらかがみの前でおどる。終わったのでユニホームを着ようとするけど前と後ろを逆にして着てしまった。もう一度はきかえようとしたそのとき小さいおじさんがまほうできちんと服を着させてくれました。
「ありがとう。」
と言おうとして後ろを見てもだれもいなかった。とてもこわかった。
 全部準備が終わったからねようとしてマクラの上に頭を置こうとしたその時父にマクラをとられて頭を打ちそうになったが、バスケを習っていたおかげで危機一髪大丈夫だった。
 そして、シュートの練習をするために家の後ろに行こうとするとカエルがたくさんいて朝ご飯を食べていたのでそこを通るのも申しわけなかったので回り道をして後ろへ行き、シュートの練習をした。時間はどんどんせまってくる。私は試合でおこられたくなかったので行きたくなかった。そこで私は思いついた。練習中にケガすればいいんだ。そして父と練習するときにケガするために横にたおれた。すると、父にキャッチされて計画はおだ仏になった。トホホ。
 あっもう時間だ。試合では自分からあきらめずにカエルみたいにジャンプしながらシュートまで行こう。では、いってきます。

小学生の部・最優秀賞
おばあちゃんのノート

宇都宮大学共同教育学部附属小学校 6年 岩佐 葵(いわさ あおい)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
最初は日記だった
今日はいつもより暑かった
朝にヨーグルトを食べた
テレビで紹介された本を買いに行った
ブルーベリーは目に良いらしい

次は健康カードになった
足が痛くてしびれる
病院で薬をもらった
今日は調子がいいみたい
快便ですっきり

その次は取り扱い説明書に変わった
炊飯器は赤いスイッチを押す
洗濯機は大きな丸いボタンを押すだけ
電話は充電すること
電話番号は机に貼ってあります

そして、いつの間にかページが家族の名前であふれていた
行間に見え隠れするおばあちゃんの不安
名前を忘れないように名前を書き
忘れた名前を書いた名前でもう一度覚える
そして忘れないようにまた名前を書く

その後は白い景色しかなかった
続きは記憶の中に書いているのかな

今日からは私が書こう
おばあちゃんの言葉
おばあちゃんのいた景色
おばあちゃんの日常
忘れないように
おばあちゃんが私を
忘れないように
中学生の部・最優秀賞
どっか行けっ。

糸満市立三和中学校 3年 平田 永愛(ひらた えな)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
どっか行けって
変な言葉。
変に優しい。
どこにでも行っていいってことでしょ?
私なら違う、
どっか行けでも
あっち行けでもない。

私の声が聞こえなくて、
あんたを見ることなんて一生なくて、
私とあんたのことを知る人が
誰もいないところに行けって言う。

そこであんたは、
色んな人に会って
私は、幸せ、幸せって
よろこんでいたらいい。

私の知らない所で
どうにでもなってくれたらいい。

そしたら、
あんたは、いつの日か、
私の言ったことなんて忘れて、
あんたも私も死んで、
全部なくなるんだろう。

それなら、いい。

いつか、時がたつでしょう。
時が全てを流すでしょう。

そうそう、それそれ。
どうせ、全部、なくなる。
分かったら、とっとと
どっか行けっ。

高校生の部・最優秀賞
社畜の王

富山県立富山高等学校 1年 小西 彩羽(こにし あやは)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
社畜という言葉
社会で戦う戦士と思えば
会社は組織図は冒険者ギルドだ
社長・重役たちは高ランカー
高難度クエストの責任は大きい
魔法使いは参謀のような頭脳派
接近戦にはめっぽう弱い
戦士たちは戦いにあけくれる
回復薬はお酒それとも睡眠
あるゲームのように一瞬で全回復
なんてことはない
毒・しびれ状態はうつ病
こんな感じで社会はゲームと違い
何度もやり直せない
戦士たちは昼夜問はず戦い続ける
シンプルにかっこいい
社畜って最強なのでは…

私のお父さんは最強にかっこいいと思う
社会のつらさを
大人になって必要なことを教えてくれる
そのうえずっと働いている
正直今の私には無理だ

社畜の王は最強のメンタルと体力をもつ
かっこいい戦士だ

社畜を恥ずかしいとおもって抗うことも
一つの強さだがそのまま抗い続けられるのか
チリのようなプライド捨てたほうが潔い

わたしにとって父は
最強な社畜の王の一人だ。

小学生の部・優秀賞
きのこ

奈良市立青和小学校 1年 山本 直央(やまもと なお)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
ぼくは「き」の「こ」
きのこどもっていわれるけど
おおきくなっても
「き」にはなれないよ
でもぼくと「き」は
とてもなかよしなんだ
「き」からごはんをもらって
どんどんおおきくなる
じめじめしたところがだいすきで
もりにかぞくがたくさんいるよ
とらんぽりんのような
すごくおおきいなかまや
とてもたかいところにはえて
にんげんのおとなでもとれないかもしれない
やつもいるんだ
いろんないろとかたちがあるし
にんげんがたべると
おいしいのもあれば
どくがはいっていて
ころしてしまうのもある
でもどくきのこがはえても「き」は
ぜんぜんきにしない
どっちでもいい

奈良市立青和小学校 6年 山本 嶺央(やまもと れお)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
朝ごはんはパンかごはんか
「どっちでもいい」
栄養はほとんど変わらないから

お出かけするかしないか
「どっちでもいい」
別に家に居ても居なくてもいいから

外食するか家で食べるか
「どっちでもいい」
食べることに変わりはないから

塾に行くか行かないか
「どっちでもいい」
メリットとデメリットが同じぐらいだから

野球を続けるかどうか
「どっちでもいい」
これで人生が変わるわけではないから

夏休みの宿題、作文書くか絵を描くか
「どっちでもいい」
どっちでもやったことになるから

本を買うか買わないか
「どっちでもいい」
そんなに本を買いたいと思わないし、
本があったらあったで読書できる

家庭科でつくるエプロンの柄どれにするか
「どれでもいい。ママが好きなやつで」
どんな柄でもエプロンはエプロン

ごはんのときのコップはどれにするか
「どれでもいい」
飲めるは飲めるし、選んでくれる人に悪い

宿題を先にするか、自学するか
「どっちでもいい」
どっちも勉強に違いない

お風呂に先に入るか後に入るか
「どっちでもいい」
お風呂に入ることに変わりない
あまり長く入らないし

あー決められない!
あれこれ聞かれてもうるさいだけ
別にどっちでもいいじゃん
でもテレビ番組を見るのと、
ゲームをすることは
どっちでもよくない
必ず「見たい」「したい」
だから僕は優柔不断ではない!

でもついつい言ってしまう
「どっちでもいい」

中学生の部・優秀賞
スターチス

富山市立大泉中学校 3年 吉田 茉央(よしだ まお)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
「こんにちは」「こんにちは」
ぞうさんのじょうろで虹がかかった
顔は見えなかった

「こんにちは」
「あら、暑いのにご苦労様」
自らの小さな体を立派な花で彩りながら
あなたと私の水晶体が重なりあう
あなたのは濁っていて少し怖かったです

「こんにちは」
湿っぽくて鉄っぽくて
どこもかしこも溜め息ばかりの夕立
君たちに精気を分け与えてもらったおかげで
今日は手応えがあったよ

「こんにちは」
空虚なはずの家の前には
形だけの外車が停まっていた
車には水垢がまばらに付いていて
私はもっと汚したくなった

「こんにちは」
威勢よく家を取り囲んでいた君たちも
瞬く間に萎れてしまった
君はおじいちゃん?おばあちゃん?
…それとも?

「近所に事故物件とか予測できないって」
穢れものを見るかのように避けられ
罵詈雑言を浴び
時にフラッシュもたかれながら
それでもあなたは、じーっと耐えている

「こんにちは」
あなたは更地になるそうですね
昨日家に来た
やたらと声の大きいおじさんから聞いて
更地って痛いのかな、きっと痛いですよね
身代わりになってあげたかった

よっこらしょ、水を汲もう
キュっと蛇口を捻って
おなかを満たしてあげた
妹くらいのじょうろを抱えて
わずか3段の階段を
重さで震える体でゆっくりと下りていく
わずか徒歩6歩の異音がする扉を開ける
満月が雲で隠れている隙にね、早く早く
夜な夜な、液体を真上から垂らすのは
ちょっぴり恥ずかしくなってくる
君たちは無抵抗で
私を受け止めているというのに
そう、酔いしれている間に
月に照らされてしまった
どうしよう
君たちに視線を戻す
なんだか、嬉しがっているような
照れているような、そんな気がした
「こんばんは」

いちどきり

高岡市立中田中学校 1年 平澤 椛(ひらさわ かえで) 
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
いちどきり
っていうけれど、
しょうじき
よくわかんない。
うまくできないからって
はぶかれちゃった。
いかりがげんかいをむかえたのだ。
ちがでるほどに
どんどん とかべをたたいた。
きもちがすこしかるくなったのだ。
りすのようにちいさくなった。

すきなことをみつけた。
きぶんはあがる。
なかよしなこともであえて
こどもにもどったきがした。
ともだちってすばらしいね。
しずかでもきまずくない。
てつだいだってしてくれる。
いきていくうえでの
きぼうのようだ。
てとてをとりあい、
いくつもの
こんなんを
うえをむいてのりこえよう。
ぜったいに。

ねえ、気付いた?
頭文字だけで読んでみて?
私が伝えたいことさ。


高校生の部・優秀賞
垂直落下

福島県立会津学鳳高等学校 2年 中村 香恋(なかむら かれん)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
鮮やかな牡丹の浴衣を着て
カランコロン カランコロン
花の髪飾りが
ゆらゆらり ゆらゆらり

本当は要らなかった玩具(おもちゃ)の指輪
小指にすらやっとで収まった
薬指に入れば何か変わりましたか

本当は痛かった喰い込む鼻緒
それでも私は歩みたくて
貴方は私の足元なんて 気にはしない

それでも、
溶ける綿菓子は甘かったので。
それでも、
屋台のおじさんは私たちの関係を見紛うので。

それだけに酔って 帰ってしまえば


良い夢


だったのでしょうね、

浮かれ模様の浴衣の花が
萎れてゆくように
あの火花は垂直に落下する
皮肉な程に美しいままの
造花の髪飾り
冥王星系女子

ルネサンス大阪高等学校 3年 荒木 帆翔(あらき ほのか)
poemImage
絵 北山 知絵子 さん 
水金地火木土天海。太陽はそのずっと先にいる。
あざとく計算高い水星さん、確実な機会をうかがう金星ちゃん。
太陽の影響を受けない人なんていないのだ。
あの子の回りは常に沢山の人人人。
割って入って話しかける勇気などありません。
そんな私は冥王星系女子。

フワフワフワリ、宇宙を巡る小惑星。
最初こそは頑張った。少しは存在気付いてくれた、と、思いたい、思ったもん勝ち。
地球に咲くヒマワリは太陽の方を必ず向くらしい。
あぁ、ライバルしかいない。太陽よ、わたしはここです。
幸せをただ待つしかできない私は冥王星系女子。

フワフワフワリ、軌道も忘れた小惑星。
あつい、と感じるのは日の光のせいではなく、七畳半の宇宙に響く蝉の声でもなく。
胸のずっと奥の冥王星のせい。それを恋という天体現象と名付けるのはもう少し時間がかかるかも。
きっと私は冥王星系女子。

フワフワフワリ、漂いながら銀河の端っこで「だいすき」と叫ぶ。
あなたに届くのは何億光年後でしょうか。
ネットワークも発展したけど。
星々はゆっくり動く。
そうだ、占いでも見て見よう。
あらら今日も最下位。のぞいた時に限ってこういう結果です。
冥王星系女子は笑う。
長丁場結構結構。宇宙は無限なんだから。
冥王星系女子は笑う。
冥王星系女子は笑う…。

小学生の部・佳作
かくれんぼ

奈良市立青和小学校 1年 山本 愛奈(やまもと あんな)
かぞくは7にん
おばあちゃんいつもひるねしてる
おかあさんぱそこんでしごと
おとうさんはこどもをみるしごと
おとうとといもうとと
おねえちゃんとおにいちゃんと
いっしょにかくれんぼ
おにはおにいちゃん
いつもおにはおにいちゃん
だって「おに」からはじまっているから
でもおにいちゃんはぜんぜん
つかまえることができない
ちいさいひとは
どこにでもかくれることができるから
でもぱぱはヒントをしってる
ほんとはぜんぶみてるから
みんなはぱぱからもかくれる
おにのおにいちゃんはがんばる
ぱぱがさいしょにみつかる
わたしがさいご
あーたのしかった
お母さんの音

富山大学人間発達科学部附属小学校 3年 奥 望帆子(おく みほこ)
タッタッタッ

仕事から走ってくるお母さんの足音、好き

トントントン

お母さんのキャベツの千切りの音、好き

パタパタパタパタ

おけしょうするお母さんの音とにおい、好き

スースースー

あれっ?お昼ねしてる?

お母さんのいびきの音、好き

ぎゅーーーーーーーーーーーーーーっ

「がんばったね」とお母さんに、

だきしめてもらえる、

パワーをくれる音、いちばん大・大好き。
緑と赤の夏

砺波市立砺波北部小学校 4年 塩谷 千笑子(しおや ちえこ)
トントントントン
台所でお母さんが何かを切っている
もしかして、これは・・・⁉
キュウリとトマトじゃん‼
私は、「なんで切っちゃうの‼そのままで食べたほうがおいしいのに‼」とさけぶ

私は、おじいちゃんが畑で作ったキュウリとトマトが大好きだ
私の夏は、これがないとはじまらない

キュウリはあらって、そのまま一本パクッと食べる
何もついていないキュウリを食べると夏もがんばるぞーって思う

トマトもあらって、丸ごと一こパクッと食べる
太陽の光をあびたトマトはとってもあまい
でも、それよりも、トマトの木がかれてきたころのものは、もっとおいしい
このトマトを食べると、夏も終わりなんだなあと思う
夏の終わりに近づくと、私は少しさびしくなる
キュウリとトマトが畑からいなくなるからだ
今年の夏は終わっても、来年の夏がまっている
さようなら、おじいちゃんの畑で育ったキュウリとトマト
また来年、会いましょう
緑のキュウリと赤のトマト
ぼくのからだ

豊橋市立松山小学校 2年 松井 理門(まつい りもん)
ぼくのからだには
だれもいないのに
どんどんかんがえてしまう

ぼくのからだには
だれもいないのに
どんどんきもちがわいてくる

ぼくのからだには
だれもいないのに
ねっころがるとねてしまう

ぼくのからだには
だれもいないのに
いつのまにかおなかがへってしまう

ぼくのからだには
だれもいないのに
いつのまにか
おとなになっている
やくそく

高岡市立平米小学校 3年 若野 祥子(わかの しょうこ)
雲がひとつもない青空の日
ひっこし前のおはかの
ひいおばあちゃんに会いに行った

わたしが生まれる二年前に
お空にたび立った ひいおばあちゃん
かいだんを ひとつ ふたつ のぼると

「こんにちは」

前を向いて そっと 手を合わせた
横を向いて ひとつ ふたつ みっつ
また前を向いて そっと 手を合わせた

お花を入れる場所も
お線こうとろうそくを立てる場所も
ぜんぶ なくなった

右にある立山
雪のぼうしをかぶって
にこにこ にっこり
左にあるきれいな海
太陽の光をあびて
キラキラ かがやいている
わたしはおはかのひいおばあちゃんの
うしろで クルクル走ってジャンプして
とっても楽しいな

その時 大きな木から
ちょうちょが 二頭
ふわりふわりと やってきた
二頭でなかよく おさんぽしている

あれっ?
もしかして ひいおばあちゃん
ひいおじいちゃんといっしょなの

生きている時は会えなかったけど
今日 やっと会えたね わたしたち
いそがしいのに遠くからありがとう
目の前にやって来てくれてありがとう

ひっこしがおわったら また会いに行くね
そして またみんなで遊ぼうね
やくそくだよ またね
わたしはずっとずっとわすれないよ
中学生の部・佳作
ある日

薩摩川内市立川内北中学校 1年 橋口 大希(はしぐち だいき)
海は広いなしょっぱいな

ヒンヤリと僕を包みこんでくれる海は

いつの間にかたいようをのみこみはじめてる

「海からでたくない」そう願った

だってさ上がって着替えても

たどりつく先はお酒臭いおじいちゃんたち

もしそれがなくてもどんどん料理をすすめられるにきまってる

そんなおじいちゃんちに帰りたくないよ

でも蛍がきれいに光るころ僕は

おじいちゃんと釣った鮎を食べていた

おじいちゃんは

「おまんさあと釣った鮎はうまかねー」

ポツリと言った

たんしいかん

町田市立薬師中学校 2年 前岡 里奈(まえおか りな)
たんかたん
かたんかたんか
たんかたん
かたんかたんか
たんかたんかた

しいかしい
かしいかしいか
しいかしい
かしいかしいか
しいかしいかし

かんしかん
しかんしかんし
かんしかん
しかんしかんし
かんしかんしか

ぼくのいもうと

上智福岡中学高等学校 2年 溝口奏真(みぞぐち そうま)
ぼくにはいもうとがいた
おぼえていないけれど

いもうとは8さいになる 
はずだった

生まれてから
ずっと病院にいた
おぼえていないけれど

一回だけ会ったいもうと
おぼえていないけれど
毎日写真で会ういもうと

いもうとは 
自分で

息をできなかった
おっぱいを飲めなかった
うんちをできなかった
ママもパパも見えなかった

本当は 
自分で

息をしたかった
おっぱいを飲みたかった
うんちをしたかった
ママとパパを見たかった 
だろう

でもできなかった

もしも 願いが
かなう ならば

なにをしたい?

自由にしたい
自由にしたい
自由にしたい

ぼくにはいもうとがいた

ぼくは
いっぱい いっぱい
生きよう


カツカレー

高岡市立高岡西部中学校 1年 今井 一咲(いまい いっさ)
母がカレーをつくった

おいしいカレーだ

ぼくはカツカレーにしたかった

弟といっしょにカツを買いにいった

とちゅう先生にあった

「カツを買いにいくといったらわらわれた」

カツは500円だった

おいしいカレーがさらにおいしくなった

ケッペン

高岡市立高岡西部中学校 1年 釜谷 光(かまたに ひかる)
アメリカの国旗は

星が51個でアメリカなんだ

50個ではアメリカではない

だから

カリフォルニア半島も

メキシコ半島になるだろう

メサベルデ国立公園も

ウェザーリルが

クリフパレスを見つけることなく

「ただの土地」になっただろう

一個で変わる

ああパズルのようだ


高校生の部・佳作
嫌悪

筑紫女学園高等学校 1年 松田 菜々心(まつだ ななみ)
私はあの子が嫌いです。
傷つく言葉を言われても
本音を隠そうとするあの子が
どうしようもなく嫌いです。
理由はありません。
ただ、あの子が嫌いなのです。
ひとを嫌うことは
いけないことだと知っています。

それでも、私はあの子が嫌いです。
本音を言わず
周りに同調しているだけのあの子が
どうしようもなく嫌いです。
理由はありません。
ただ、あの子が嫌いなのです。
ひとを嫌うことは
いけないことだと知っています。

そうだとしても私はあの子が嫌いです。
間違っていることを
間違っていると言えない
臆病なあの子が
どうしようもなく嫌いです。
理由はありません。
ただ、あの子が嫌いなのです。
ひとを嫌うことは
いけないことだと知っています。

私がなぜあの子が嫌いなのか
私自身もわかりません。
たとえ誰かがあの子のことを
普通だと、正しいと
そのままでいいと言ったとしても
私は私が嫌いです。

自転車

神奈川県立湘南高等学校 1年 井之川 帆南(いのかわ ほなみ)
自転車で学校へゆきます。
黙々とゆきます。
風があいさつしてきましたので、
会釈してゆきます。
追い風が吹いて、
背中を押されました。
黙々とゆきます。

自転車で学校へゆきます。
しゃーしゃーとゆきます。
公園を通りすぎましたので、
懐かしんでゆきます。
すべり台に何人も、
子供が並んでおりました。
しゃーしゃーとゆきます。

自転車で学校へゆきます。
いそいそとゆきます。
電車が走っていますので、
横目に見てゆきます。
満員の列車の窓に、
サラリーマンが見えました。
いそいそとゆきます。

自転車で学校へゆきます。
あせあせとゆきます。
老婆が散歩をしていますので、
追い越してゆきます。
歩幅を合わせてゆっくりと、
寄り添う犬がおりました。
あせあせとゆきます。

自転車で学校へゆきます。
わくわくとゆきます。
長い坂がありますので、
立ちこぎでゆきます。
上りきると眼前に、
富士が笑っておりました。
わくわくとゆきます。


自転車でうちへ帰ります。
のろのろと帰ります。
分かれ道につきましたので、
一人で帰ります。
坂から街を見下ろすと、
橙に染まっておりました。
のろのろと帰ります。
一人で帰ります。
サイコーキセキ

東京都立一橋高等学校 3年 森 恵彩(もり えれな)
ナーナーナーナー
ワニナロ ワニナロ
たまにはナコー
そしたらみんな あわせて ハロー!

ハーレー彗星 おかしいな?
76なの? 80か?

ハーレー ハーレー ハレッ ハレッ
晴れてるだけじゃぁ 物足りない
フーレー フーレー フレッ フレッ
雨も降ったぞ いい感じ
ゴーロー ゴーロー ゴロッ ゴロッ
ムッ かみなりさまの お出ましか?

それからハレて 虹が出た

ニッ!

364日 いつもよろ
何か引いたよ シクがない

364ひくよろ49は……?

サイコーだっ!!!
オムライスちゃん

東京電機大学高等学校 2年 淺田 萌衣(あさだ もえ)
 今日の夕食は、オムライス 私の一番の好物 ふわふわの黄色い卵に包まれたオレンジ色のケチャップライス そして、卵の上にケチャップでトッピング 味は最高に美味しい 素晴らしい一品だ
 私は君だけのオムライスになりたいな ふわふわ卵だけだと見た目は地味だよね 私の見た目も少し地味よね でも、内面はパンチの効いたケチャップライス 少しだけ一緒にお話してみない? 面白いことをたくさん話してあげる あとね、おしゃれをしたらどんな女の子にも負けないよ かわいいお洋服、アクセサリー そして、メイク オムライスだってそうでしょ? ケチャップをかけると華やかになるのだから 意外と自信あるのよ だって、私は「オムライスちゃん」だから!
 少し考えが変わっているってよく他の人から言われちゃう 変わり者だって 友達に、「私は、オムライスに似ている。」って言ったら、笑われちゃった 君も私の友達のように笑うのかな? 私は、君の「笑顔」が見たいのに でもね、君を笑顔にできると保証できる だって、オムライスは絶対に美味しいのだから オムライスを食べたら、美味しすぎて笑顔になっちゃうもの 私のことをもっとよく見てよ ケチャップライスは旨味豊富で、具材もいっぱい つまり、私は面白さでいっぱいということね 君のこと毎日楽しくて、幸せにしてあげるよ
 ある日、君と隣になって、私はふと聞いてみる「好きな食べ物は何?」 急な私の質問に君は少し驚いたが、こう答えた 「オムライスが好き。」 私は、顔を赤くしてしまった だって、私は「オムライスちゃん」だからね「いやいや、今、彼が言ったのは、私のことじゃないから!」と自分で自分に言う ちょっと考えすぎてしまった「オムライスちゃん」です
 君もオムライスが好きなんて、運命感じてしまうね もしかして、君は「オムライスくん」かもね そんなことを考えている昼休み 君は、不思議そうに私を見る 「どうしたの?」と君が言う 「ちょっと考え事をしていた。」と返す私 妄想しすぎの「オムライスちゃん」でございます
 それから私たちは話すようになった 私は君に面白い話をいっぱいした 私のオムライスパワーで、君は笑顔になってくれた たくさん話してさらに仲が良くなったときに、私は君に話すことを決めた 「私ってオムライスに似てない?」 君は微笑みながらこう返した 「よくわからないかな。」 この言葉が嬉しかった だって、オムライスでなくてもオムライスでもどちらでも良いのだから それでも私は、「オムライスちゃん」なのかな
誰もが、

愛知県立旭丘高等学校 2年 渡邉 美愛(わたなべ みえ)
オンナノコはどうして前髪を固めるのか?
この疑問を解決すべく
我々はアマゾンの奥地へ向かった
アリャ、そんな目で見ないで下せェよ
巫山戯てる訳じゃァないんです
だってそうでしょ?
奴らは50m走を全力で走っても
ビュッと風に吹かれても
平安時代のおひいさまの簾みたいに
額の水平線からぶら下がってる

オンナノコは情報収集・拡散
そして愛想がなければ生きていけない
トイレではキャラキャラした声で
廊下ではヘドロを吐くように
同調しなければ生きていけない
虫は怖いフリをして
かっこいい男の子は大好きなふりをして
そうして偽りを着る度に
隠すことだけが巧くなってゆく

額は心の鏡だって
うちのばあちゃんはよく言っておりました
孤独な殻に棲む人間も
人と繋がれる時代だからなァ
本音は必要ないのかもしれねェな
心を隠しても笑える時代か、
天気のぐらついてる夜みたいな今を
誰もが生きてるんだなァ

まァ、私は前髪ないんですけどね
お後がよろしいようで。
小学生の部・奨励賞
山のぼり

富山市立藤ノ木小学校 2年 蒔田 陸人(まきた りくと)

今からのぼるぞ
すぎ林をズンズンすすむ
あ 川があったよ
魚がいる
水が光ってる
はしもある

石があってガタガタだ
足がいたくなってきた
さいごのかいだん
もうちょっと
がんばろう
ぎゃっ ガのたいぐんだ
にげろ

やっと山ちょうにとうちゃく
ああ つかれた
ジュースがうまい
みち せまかった
虫も人もたくさんいた

ああ いいけしき
山 町 空
さかなのスイスイ

高岡市立能町小学校 3年 長守 魁彪(ながもり かいと)
ぼくはスイスイ

さかなのスイスイ

ぼくには友だちがいる

泳ぐのがはやいサカーと

力が強いドッスンくんがいるんだぞ。

みんなに自まんしてやろう

みんなはぜったいおどろくぞ

きぜつするぐらいおどろくぞ

でもきぜつしちゃったらこまるけど

でもわらったらドッスンくんでおどろかしてやる

あっちも友だちがいたらサカーくんときょうそうしてうんと言わせて

やる

さっそくいくぞ

でもぼくにそんなこと言う人いないんだった

高岡市立能町小学校 6年 芹原 沙來(せりはら さら)
帰り道にある田んぼのカエル100ぴきが家まで歌いながらおくってくれます。

駅で落とし穴に落ちて穴から出てくると家に着いていました。

帰り道にコンビニによってトイレに入ると家でした。

坂で転んでそのまま転がり続けてどんどんスピードが増し、新幹線と同じぐらいになって気がつくと家に着いています。

帰り道にある田んぼから本間大すけというかいぶつが現れ頭のつんつんした部分でさされそうになり目をつぶるといつのまにか目の前に自分の家がありました。
テレビが心をワクワクさせてくる

小牧市立小牧原小学校 3年 福島 穂乃果(ふくしま ほのか)
テレビが心をワクワクさせてくる
にじのダンスでワクワクさせてくる
ゲームするわたしの目の前で
テレビはふしぎな声で話しかけてくる
テレビを見て、もっと見て
ずっとずっと見て、けさないで
楽しいばん組がまってるぞ
ずっとずっと見ていろよ

テレビが心をワクワクさせてくる
そんなにおどるな、ワクワクさせるな
すっごくいやだけど、でんげん切って
テレビにむかって
わたしも負けずにおこるんだ
見ないよ、見ない、
見たいけど、見ない
見ようとするとママがこわいから
しゅく題が終わったら
しゅく題が終わったら、また見るよ
おはよう

姫路市立四郷学院 6年 先山 康輝(さきやま こうき)
いつか夢を叶えるために
そこにいる僕が眠りにつく
そのいびきで
おじいちゃんが大声を出す
その大声で犬が吠える
犬がワンワンと吠えるとニワトリが起きる
ニワトリが起きるとコケコッコー
みんな おはよう
そしてまた眠りにつく
その眠りは僕の理想であふれる
そのいびきでおじいちゃんが大声を出す
その大声で犬が吠える
犬がワンワンと吠えるとニワトリが起きる
ニワトリが起きるとコケコッコー
みんな おはよう
その一言で生きてる証拠
僕は毎朝おはようと言う
僕の息が止まるまで
はる なつ あき ふゆ 
はる なつ あき ふゆ
のどがかれる
せんねん まんねん
中学生の部・奨励賞
僕と犬

小矢部市立津沢中学校 1年 上木 那奈(うえき なな)
僕の向かいの家にはね
とてもかわいい犬がいる
今日学校へ向かうとちゅう
その犬はえさを食べていた
がぶりがぶりと食べる姿
たった一分で食べ終わる
僕は一瞬こう思う
「この犬ケルベロスじゃないか?」と
だがよく見れば
やっぱりかわいいトイプードル
それなのにこの犬の名は
見た目とは違う
「ポチ」や「タマ」ではない
君たちはどんな名だと思う
正解は「ボス」だ
翌日ボスのところへ行ってみた
今日は機嫌が悪そうだ
それでも僕は仲良くなりたい
そこで飼い主さんに聞いてみた
「ボールをあげたら仲良くなれるよ」
そうして僕はボールをあげた
するとボスは僕にとびついた
僕は一瞬こう思う
「この犬チョロいな」と
それでも僕はうれしいよ
だってボスと友達になれた
目が覚めればそれは夢だった
でも僕は幸せな夢をみた

貴女へ

富山市立速星中学校 1年 思田 愛美梨(おもいだ えみり)
笑っている貴女
頑張る貴女
守ってくれる貴女
未知と戦う貴女
私の中には沢山の貴女が居る
でも今は無理をしている貴女が居る
前みたいに笑っている貴女はいない
はやく本当の貴女に戻ってほしい
こんな風に願う度に
本当の貴女は遠くなっていく
どんどん未知という生物が
貴女を苦しめていく
しまいには貴女を私からうばった
いつも隣で笑っていた貴女が
私の背中をなでてくれた貴女が
私の隣からいなくなった
この時私は分かった
どれだけ貴女に頼っていたか
どれだけ貴女に負担をかけていたか
私から貴女をうばったのは未知じゃなくて
私自身だ
本当の貴女に戻ってほしいと願うだけで
何も出来ない無能な人間だ
貴女の負担を軽くしたい
自立しなきゃ負担を軽く出来ない
時がたてばきっと私も変われる
変わった私なら貴女と戦える
未知と戦っているのは貴女だけじゃない
貴女は一人じゃない
周りにはいつも私がいる
疲れたら疲れたって言っていい
つらいならつらいって言っていい
にげたくなったらにげたって良い
どんな貴女も受け止めるから
貴女にはもっと貴女を大切にしてほしい
貴女が私を大切にしてくれたように
貴女が私を守ってくれたように
貴女が貴女自身を守ってあげて
無理なんてしなくていいよ
苦しんでいる貴女を見たくないよ
もっと自分に正直になってよ
貴女が一人で進めないなら
私が一緒に進むよ
転んだなら一緒に立とう
泣きたいなら一緒に泣こう
一人じゃ見れない景色を一緒に見よう
一人じゃ勝てなくても二人で勝とう
一緒に笑って過ごそう
一人じゃ歩けない道を一緒に歩こう
どんな時も隣にいるよ
一人じゃないよ
一緒に頑張ろう
二人で一緒に一歩ずつ前に行こう
未知という生物に二人で勝とう
そして二人でたくさん笑おう
大好きな貴女へ
可動

日本工業大学駒場中学校 1年 川合 幹司郎(かわい かんしろう)
目覚ましの音
部屋の中
輪郭が光るカーテン
立ち上がる
朝が始まる

両手に受ける水
顔に当て
みつからないスイッチ
探りながら
今日を始める

ペダルを回す
風に挑む
先の見えない未来に
僕を託す
覚悟を決める

電車に乗る
棒立ちで
揺れる目線の先は
いつもの景色
立ち上げ完了

校門めがけて
全速力
靴を履き替えたら
自信 可動
僕を始める

ことわざだもの

神奈川県立相模原中等教育学校 2年 安藤 優香(あんどう ゆうか)
豚だって
パールでおしゃれしたいし
河童だって
流れるプールで泳ぎたい

焼き石に水をかけたら
サウナーが整うし
釘だって
ぬか漬けに入れたら鉄分補給できるらしい

そんなものじゃない
ことわざだもの

だから二度目でも
鬼の顔だぞ
てぃんとんしゃーん♪

高岡市立高岡西部中学校 1年 上坂 粋生(こうさか すいせ)
 てぃんとん たんとんてぃんとんしゃーん
    シーン・・・
 おい!おい!おーいっ!
 誰かが叫ぶ
てぃんとん たんとんてぃんとんしゃーん
 はあ~
 いい加減にしてくれよ~
 ああ お父さんの嘆きだ
てぃんとん たんとんてぃんとんしゃーん
 うぬぬぬぬっ
 兄ちゃんの携帯か
ってことは今何時?
 ヤバイよ ヤバイよ
 ギャー
 猛スピードで階段をかけおりる
 セーフ!やったね!ぴったし6時
 今日も長い間鳴っとたね
 お母さんがへへっと笑った
 お父さんは超不愉快そう
 あいつは携帯の目覚ましじゃなくて
 おれの人力で起きとるようなもんやって
 ぼとぼとぼと
 兄ちゃんはまだまだ
 まだまだ夢の中
 毎日、毎日くり返される
 我が家のこのくだり
 お父さんお兄ちゃんの目覚ましは
 リラックス効果があって
 アルファ波が出る曲らしいよ
 まあそりゃ絶対起きれんわな
 やっぱりねそうだろね
高校生の部・奨励賞
幸せな大人になりたい

神奈川県立湘南高等学校 2年 小林 彩奈(こばやし あやな)
隅に埃が溜まったワンルーム。つけっぱなし
のテレビは騒がしく光る。指紋と油汚れに塗
れた小さな画面を突きながら、発泡酒を口に
含んだ。ワイシャツとくたびれたスウェット
はちぐはぐで、僕にお似合いだと感じた。丸
まった背をおもむろに持ち上げて言う。
「……疲れた」


そんな夢だった

大人になった僕は
薄暗い部屋にいた
こけた頬ににきびが二つと
唇の下に黒子

高校生の僕は
リビングの机で居眠りしていた
分厚い問題集の跡が首にくっきりついて
静かに笑った

振り返ると
姉と両親が流行りのアニメを見ていた

背筋を伸ばす

妙に頭はすっきりしていて
どこへでも飛び立てるような
不思議な心地がした

胸に手を当てる

堅実な拍動は止まない
きっと大人になっても続いているはず

こうして再び勉強の海へ誘われてゆく


大人になった僕へ
一つだけ質問があります

これから僕が辿り着く先に
ちゃんと幸せはありますか?
はる

神奈川県立湘南高等学校 1年 泉 まいこ(いずみ まいこ)
ベランダを 大きくあけはなった ごご
さむさの中に かくじつに
はるのにおいが まじっていました

どこかでオオイヌノフグリがさいてるなって
そう おもいました
あの小さくてかわいい まっさおなお花が
あたまにうかんだんです
きっと 小さいころのわたしは
このにおいをかぎながら
あのお花を見たんだろう とおもいます

はるがきます

こころのなかが
ちょっぴりザワザワするんです
はじめて
わたしをしってる人がいないせかいへ
いかなきゃいけないときが
ちかづいています
あたりまえがあたりまえじゃなくなる日が
ちかづいています

こわいでしょうか?
そうでしょう
ワクワクしますか?
はい とっても
たのしみですか?
もちろんです
ではなぜ ザワザワなのですか?
それは
それは きっと
ひっそりかくれた ふあんが
はるのあたたかさにさそわれて
かおを出してしまっただけですよ

16から17へ

富山県立魚津高等学校 2年 長谷川 陽菜(はせがわ ひな)
電子時計の数字が
音もなく時を区切っていく

あと1分
これからは模試の受験届
二度と16と書かないのか
アンケートのマークシート
1と7を塗りつぶすんだろうか
年を聞かれたとき
どんな気持ちだろう
もうすぐ大人だ

あと10秒
ばいばい、16の私
歩くとき俯いてばっかの16の私
嫌いじゃないからね
見とってよ
そこからでいいから

「おはよう」が
喉につっかえて言えなかった
16の私を
17の私は
覚えているかな
もうすぐ訊けるね
あの人のようになりたい

あと5秒
コトッという物音
馬のはなむけ
出港の旗
大きく息を吸う
鼻が涼しい
眼を見開く
見逃さぬように
これまでとは違うにおいが、した
3、2、1

月と秋風

福岡県立明善高等学校 1年 松田 沓子(まつだ とうこ)
涼やかな秋風、私の頬をするりと撫でる
ベランダの向こう、真ん丸な秋の月。
風に乗ってふわりと漂う
月光を透かす薄雲、彼の煙草の煙。
心地よい匂いが鼻腔を満たす
オレンジ色の光が揺蕩う
はらりとかかる黒のくせ毛
傾いたグラスに琥珀色がきらり揺れた。
かけられた上着はほんのり、あたたかく。
そっと、そっと、頬を寄せる。
いつの間にか
蝉たちにとって代わった虫たちに
紛れるようにささやき声
「月が綺麗ですね」
まるでどこかの詩歌のごとく呟く。
「死にたいくらいに。」
彼がバスのやわらかな声で答える。
吹いた秋風、薄の原をゆるりと揺らす
告げる

国際基督教大学高等学校 2年 豊田 隼人(とよた はやと)
告げてはいけない日に
告げたこと
死んでいった孔雀たちの生き方

告げてはいけない場所で
告げたこと
故郷がどれだけ胆汁を嘗めたのか

告げてはいけないことを
告げた日に
生きているのは灰の色した鳩の羽

告げてはいけないことを
告げた場所で
生きてゆくのは白くなりゆく人の群れ